英語学習もろもろ

アクセスカウンタ

zoom RSS 英語脳、あるのか、ないのか、分からない。それでも行かねばならぬ道。

<<   作成日時 : 2017/08/06 20:08   >>

面白い ブログ気持玉 5 / トラックバック 0 / コメント 0

 昨日紹介したように、「英語脳」の源流は、元浜松医科大学植村研一教授というのがネット上の情報源でした。そして、その情報源の基となったのが、植村教授がおこなった実験で、被験者は英語のできない東大生とアメリカ帰りのバイリンガル、という話でした。しかし、現在ではの植村教授の英語脳の論文はもう検索できず、英語脳を引用しているのはもう業者だけになってしまった、ということを主張しているサイトを紹介しました。

ところがですね、いろいろ google していたら、植村教授の「脳科学から見た効果的多言語習得のコツ」という論文の pdf が見つかったのです。
その論文は、認知神経学会の2010年3月10日の研究大会における「多言語使用 ― 脳科学、言語学、教育学からの多面的アプローチ ―」というシンポジウムでの、植村教授の講演を、認知神経学会の機関紙『認知神経科学』 Vol. 11 に掲載されたものでした。
題して、「脳科学から見た効果的多言語習得のコツ」
画像


この論文の中で、
以前は、ウエルニッケ感覚性言語野の全体が母国語の理解に関与していると信じられていた。しかし、Ojemann が手術中にウエルニッケ感覚性言語野を電気刺激して調べたところ、母国語に関与する部位は極めて小さい領域で、bilingual の16人の患者では1例の例外もなく、それぞれの言語に関与する独立した部位があり、お互いに2cm以上離れていることを報告した。

著者は、これを使って bilingaul の人の言語野を浜松医科大学で検査した。

その論文には、次の3つの画像が添えられ、それぞれの画像についての説明文があります。
最初の画像とその説明です。
画像

Non-bilingual の言語野。英語医学論文の読み書きは堪能だが、英語圏に留学したことがなく、英会話はできない医師での機能的磁気共鳴画像。ウエルニッケ感覚性言語野を通る水平断図で、各図とも上が前方、左が患者の右側、右が患者の左側を示す。右図は NHK の日本語ニュースを聞かせている時、左図はCNN の英語ニュースを聞かせている時の機能的磁気共鳴画像。ともにウエルニッケ感覚性言語野の同じ部位の血流が増加している。被検者は検査後、英語は全く理解できなかったと報告している。

次の画像とその説明です。
画像

図3は、bilingual である著者の脳での機能的磁気共鳴画像を示している。日本語を聞いている時はウエルニッケ感覚性言語野の後方が、英語を聞いている時はその前方が活性化され(ている)Bilingual の言語野。Bilingual である著者の脳での機能的磁気共鳴画像を示す。右図に示すように NHK のニュースを聞いている時はウエルニッケ感覚性言語野の後方が、CNN のニュースを聞いている時はその前方が活性化されている。Bilingual の人では英語と日本語とがそれぞれ独立した言語野を有している。

もう一つの画像とその説明です。
画像


これを立体的に再合成した図4で著者のウエルニッケ感覚性言語野での英語野と日本語野の位置関係がより明確に示されている。
図 3 を立体的に再合成したもので、著者の左大脳半球の外側面を示している。日本語の理解に関与する部位がウエルニッケ感覚性言語野の後方に、英語の理解に関与する部位がその前方に位置しているのがわかる。

この論文に報告されていること、前回紹介したネット上に溢れている植村教授の話とまったく違っていますね。
どちらを信用するか、と言えば、ご本人が、まぎれもない正統的な学会で、しかもシンポジュウムで発表され、学会の機関紙に載った論文の内容です。

欲を言えば、この実験がなされたのが、最近でなく、一例だけのもので、別の研究者による、別の、もっと多くの被験者による実験がないのが不満ですし、
植村論文の根拠となっているが、Ojemann の論文が、論文の注によると、
Ojemann GA, Whitaker HA(1978) The bilingual brain. Arch Neuol 35, 409-412.
40年くらい前のことで、こちらも、更なる追試が見当たらないということです。

とは言え、
先に紹介した、英語学習工学の立ち位置から行けば、imcomplete knowledge でも、分かった限りのものは、使えるものは何でも使うので、
とりあえずは、怪しげでなく、ちゃんと学会で発表され、学会誌に載った研究成果を踏まえて、英語学習の工学的に取り組むわけです。
それが、どのようなものか、おいおい分かります。

植村論文で注目すべきは、「英語脳」ということばはまったく使われていない、ということです。
この論文の key words にあげられているのは、
脳の言語習得機構、多言語使用者の脳機構、脳の仕組みからの効果的外国語教育、comfortable English の教育
で、「英語脳」は出ていません。

また、先に紹介したエデック社から出版されて著書のタイトルも
『脳の仕組みからみた英語教育』となっています。.
それに代わって、使われているのは、脳のウエルニッケ感覚性言語野にある日本語野と英語野ということばです。「脳」でなく「野」です。
これは考えてみれば当たり前で、「脳」は、本来一つしかないわけで、「英語脳」とか「日本語脳」というと、二つの「脳」があることになってしまいます。

ところがですね、今度は、「日本語野」「英語野」について google すると、植村論文関係以外には出てこないのです。
そもそも、「ウエルニッケ感覚性言語野」で google すると、出てくる Wiki は、単に「ウェルニッケ野」だけです。そこには、次のように説明されています。

ウェルニッケ野(ウェルニッケや、英: Wernicke's area)は、ヒトの皮質の一部を形成する大脳の一部で、上側頭回の後部に位置する。知覚性言語中枢とも呼ばれ、他人の言語を理解するはたらきをする
<http://bit.ly/2hJDdKK>
英語版 Wiki の Wernicke's area では、
Wernicke's area, also called Wernicke's speech area, is one of the two parts of the cerebral cortex linked, since the late nineteenth century, to speech (the other is Broca's area). It is involved in the comprehension or understanding of written and spoken language (in contrast to Broca's area that is involved in the production of language).
http://bit.ly/2filrhi
英語版には、日本語版では説明されていなかった Broca's area (ブロッカ野)についての記述もあります。
この説明によると、ウェルニッケ野は、
comprehension or understanding of written and spoken language

にかかわり、
ブロッカ野は、
production of language

にかかわる、とされています。
植村論文には、ブロッカ野への言及はありますが、このような明確な区別はしていません。

20年以上前の New York Times の Science column の記事があります。Nature 誌からの紹介です。
When an Adult Adds a Language, It's One Brain, Two Systems
By SANDRA BLAKESLEE
JULY 15, 1997
http://nyti.ms/2hyzDU4
この記事と同じ内容を紹介したサイトもあります。同じ年の三か月後ですから、当時評判になったようです。
Bilingual brain
http://bit.ly/1r0LjYi
Wednesday, October 01, 1997

上記二つの記事をうち、二番目の方が分かりやすい説明になっていますので、そこから肝心な部分を c&p します。余計なところは delete してまります。
The researchers used an instrument called a functional magnetic resonance imager to study the brains of two groups of bilingual people.
One group consisted of those who had learned a second language as children.
The other consisted of people who learned their second language later in life.
When placed inside the mri scanner to see which parts of the brain were getting more blood and were thus more active,
people from both groups were asked to think about what they had done the day before, first in one language and then the other.

Kim and Hirsch looked specifically at two language centers in the brain--
Broca’s area, in the left frontal part, which is believed to manage speech production, and
Wernicke’s area, in the rear of the brain, thought to process the meaning of language.
Both groups of people used the same part of Wernicke’s area no matter what language they were speaking.
But their use of Broca’s area differed.

People who learned a second language as children used the same region in Broca’s area for both languages.
But those who learned a second language later in life made use of a distinct region in Broca’s area for their second language--near the one activated for their native tongue
.


赤文字にしたところに注目してください。
この記事によれば、幼児期に bilingual になったグループ(グループ1)とそれ以降に二番目の言語を習ったグループ(グループ2)をそれぞれ MRI にいれて、上記のような条件で、脳の活動を調べたら、グループ1は、言語の理解をつかさどる Wernicke’s area でも、言語の production をつかさどる Broca’s でも、どちらの言語も同じ part が活性化したのに対し、
グループ2では、Wernicke’s area では、どちらの言語も同じ part が活性化したのに対し、
言語の production をつかさどる Broca’s では、別の part が活性化した、
というのです。
植村論文では、Wernicke’s area に日本語野と英語野と活性化する part が違う、と主張しています。

というわけで、「英語脳」について調べていたら、古めかしい記事ばかりで、
scientic knowledge に基づいて、ことをなそう、という、私の場合は、「英語学習工学」の立場では、どれを信用していいかわからなくなりました

これら「英語脳」が問題にしている脳の部分は、どちらかと言えば、言語の本質である文法や意味関係 (semantics) を取り扱う部分だけのような気がします。
ことばの運用に不可欠の単語の記憶とか、発音機構は、脳の記憶をつかさどる area についての scientific knowledge が必要です。また、発音は、口に覚えさせる生理的記憶ですから、心理的記憶とは別の脳の領域が関係しているはずです。

「工学」Technology は、その使命を遂行するためには、scientific knowledge が必要です。
しかし、必要十分な scientific knowledge が得られない時には、何度も繰り返しますが imcomplete knowledge でも、ありあわせのもので action を起こさなければなりません。
その一つの例が、medicine です。Ars longa: vita brebis. の ars つまり technology は、medicine のことでした。
医療(医学でなく)は、何時の時代も imcomplete な scientific knowledge に基づいて、最善を尽くしてきました。
英語学習工学も、英語を習得したい人のために、ある限りの scientific knowledge に基づいて、英語学習を成立させるよう do one's best すべきでしょう。
それには、どうするか、google しても見つからない scienttic knowledge に見切りをつけて、見切り発車をしましょうか。
実は、もう発車しています。次回以降それについて。

テーマは、ICT に基づく、英語脳養殖技術です。

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 5
面白い 面白い 面白い
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
英語脳、あるのか、ないのか、分からない。それでも行かねばならぬ道。 英語学習もろもろ/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる