日本の教科書は、なぜ薄いか その一

皆さんは、日本の教科書は、なぜあんなに薄いのだろう、と思ったことありませんか。子供の頃から、ああいう薄い教科書だけしか見ていないと、教科書はあんなものだ、と思っている人も多いでしょう。
最近はアメリカへ家族連れで赴任して現地の学校に子供を入れる家庭も増えています。そうすると、先ずは、教科書の厚さにおどろくでしょう。子供も親も。
「教科書の厚さ 国際比較」と入れて、google で検索したら、次の二つの、参考になる論考をみつけた。
いずれも、国立教育政策研究所の報告書で、ひとつは、 長崎栄三 「算数・数学教科書のあり方ー国際比較を中心にー」です。

その冒頭は次のように始まっています。

アメリカの算数・数学の教科書は厚い。日本の教科書だけに見慣れていると、アメリカの教科書を初めて見ると、その厚さに圧倒されてしまう。

もっともこの報告書は、「実際は、この厚さが、アメリカでは非常に大きな問題になっている 、、、」と厚さを問題にしているが。
www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouiku_kondan/.../siryou3_1.pdf
もうひとつは、田口重憲による調査で、必要か書だけ引用します。

アメリカ、イギリス、フランスは教科書の使用義務はなく、検定制度もない。したがって多用な要望に応えるために理科の教科書には様々な内容が取り扱われるとともに学年での内容の重複もあり、分厚い物となっている。

日本の理科の教科書のページ数は、(中略)中学校用では日本は3年間で約570ページであるのに対して、韓国は約950ページであり、中国(上海市)は約1000ページである。
www.nier.go.jp/seika_kaihatsu_2/risu-2-100_gaiyou.pdf

これらの報告書・調査も示唆するように、日本の教科書は、極端に薄い。しかし、なぜ薄いかという調査や論考は、私がネット上で調べた限りでは、見つからない。見つけた人いたら教えてください。

そこで、「日本の教科書はなぜ薄いか」、私の考えを今日のテーマにします。

私がある英語教科書の中央著者をしていた時に実際にあったことです。教科書の本文で、あと一行付け加えると、文章がぐんとよくなって、そこで取り上げられている文法事項の理解も深まるケースがありました。そこで、私がそれを主張したら、こういう返事が返って来ました。営業サイドだったか、営業の意を受けた編集長だったか忘れました。
中学校の先生は忙しい。職員室から教室へ行く間に初めてその日に教えるページを開く先生が大勢いる。一ページの行数が多いと、教室へ行くまでに読みきれない。それに、行数が多いと、教えることがそれだけ増えて負担を感ずる先生が多い。
昨日も書いたように、各地を回っている営業マンが、現場から、そういう要望を多く聞いて来ていたのでしょう。

こういう消極的な理由もありますが、次のような理由もあります。
以前、私が中学校の教師をしていた時に初任者講習の話を書きました。
「赤い赤いお日様が赤い」これだけの文章を一時限かけて教える技術が必要だ、という指導主事の話でした。
この例に典型的に見られるように、教育現場では、教科書に簡単に書かれていることを、いかに教師の腕で「料理」するか、それが教師に技量だ、という根強い考えがあります。特にある年齢層より上の人に多いのではないかな。そういう人が、教科書の選定に関わっています。

別の例です。これは学校でなく、学習塾での経験ですが、教える立場は同じです。
私の開発した My World Series という multimedia 英語学習カリキュラムがあります。Stage 1 から Stage 8 まであり、それぞれ一枚の CD に package されています。これをある学習塾の担当者に見せたところ、熱心な人で、一ヶ月くらいかけて、Stage 8 間で、全部自分でやってしまいました。その結果。
このカリキュラムは完璧です。完璧すぎて、教えることがありません。それでは、塾では困ります。

こういうこともありました。これは、卒業生の一人で、大学に非常勤で英語を教えています。その彼女に、私の大学用の multimedia 学習 CD を勧めたら、少し見た後で、いろいろいい内容があるので、一枚ください。
要するに、学生がこれを使ったら、自分の知らないことを学生が覚えてしまうので、自分だけが持って、さも自分がよく知っているかのように教えたいわけです。この師にして、この弟子あり、とは行かないものです。

教師という人種は、基本的に教え魔的な種です。自分が知らないことを、生徒・学生が知っていることを嫌います。時には、そういう学生を憎みさえします。大学など学生がレポートで、ネットから copy & paste するのを、極端に嫌うのは、自分が検索エンジンの使い方に習熟してない人がおおいのではないか、とひそかに思っていますが、どうでしょうか。つまり、学生が、自分の知らないことを調べてくると、困るわけです。真偽の確かめようもわからないので。まあ、これはちょっと typing の指先がすべりました。

だから、教科書が、アメリカのように分厚くて、勉強の仕方から、参考文献まで、何でも自分で勉強できるようになっていると、教師としては困るわけです。私の multimedia learning system に対する教師の共通する拒否反応は、これでは教えることがなくなる。

こういうことに気がついていませんか。学習参考書が、あれほど多く本屋に並んでいる国は日本だけではないでしょうか。学習参考書出版社が、数多くあり、いずれも繁盛しているのも、日本だけではないでしょうか。少なくとも、アメリカには、学習参考書や学習参考書出版社はありません。ヨーロッパ諸国も同じだと思いますが、知っている方教えてください。アジアの諸国はどうでしょうか。

なんか長くなりました。この辺で一休みしましょう。
今日の一応の結論は、教科書が厚くて、いたれりつくせりになっていると、教師は教えることがなくて困るので、教師に「料理」の最良が多いように、「薄い」教科書がのぞまれるから、ということです。


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