「クレオパトラの鼻が低かったら」は、誤訳?

今日は「鼻の展覧会」の予定でした。古今東西いろいろな鼻を実際に見てみて、long nose, short nose, 「高い鼻、低い鼻」 はどういう見かけの鼻か、自分たちで、判断してみましょう。鈴木氏の本のように、文章だけで想像していては分かりませんからね。
そして、ネット時代は、いろいろな鼻の画像を簡単に集められるのです。そういう IT に疎い著作者には、考えもつかないことなのです。そして、付け足しですが、そういう著作者たちが「紙の本」で、電子書籍やデジタル教科書に対する反対論を展開しているのです。後は言うまい。

皆さんは、イギリスの人気 comedianの Rowan Sebastian Atkinson を知っていますか。Mr. Bean という TV series で、アメリカの Emmy Award を取った人です。
以前録画してあった Mr. Bean を昨夜再度見ていて、はっと気がついたことがあったので、急遽展示会は明日に延期し、先触れとして、Mr. Bean's nose を、紹介することにしました。こんな鼻です。
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この鼻を見て、皆さんは、どう思いますか。左側のやや斜めの画像で判断すると、bridge は、そう高くないですね。英語では、long nose とは、いえないものです。昨日の「越路吹雪」の鼻は、英語的基準では、long nose ではないけど、short nose とは言えない感じではなかったでしょうか。この Mr. Bean の nose は、short nose の感じがしませんか。

今まで、long nose は、どういう形状のものか、いくつかの high-bridged nose から、想像できましたが、short nose は、単に low-bridge だけから、判断してよいものか、迷っていまいた。しかも、Pascal が、Cleopatra の nez が、plus court と言ったのを、日本では、「低かったら」と訳して、それが流布しています。
英語の教師は、「高い鼻」はlong nose というだけでなく、反対に「低い鼻」は、英語でなんと言うかと、訊かれたら、short nose と答えていたでしょう。
Mr. Bean の鼻で、先ず、日本人が気がつくのは、「高い鼻」ですよね。そして、それは、英語の基準では、short なわけです。
Short nose は、「低い鼻」ではないのです。
Pascal が、plus court と言ったのは、文字とおり、short になることで「低くなる」ことではなかったのです。そうなると、日本に流布している訳は、誤訳ということになります。あれは、誰が一体やくしたのですかね。鈴木氏は、あの訳を肯定して、英語の short nose は、「低い鼻」だと言っています。彼が、この Mr. Bean の short nose を見たらどういうでしょうか。もっともあの人は口八丁手八丁の人ですから、なんとでもいうでしょうが。

昨日の「越路吹雪」の鼻が、high-bridged でないことは、正面からは分かりませんでした。あのやや斜めの画像は、録画した画面から、苦労して capture したものです。この後に展示する画像も、ほとんどが、正面からのもので、何故かネット上には、横からの画像が少ないのです。
ということは、横から見る鼻が少ないので、正面からの画像で bridge の高さを判断するしか仕方ないです。

横から見る人の顔のことを、英語では、profile といいます。日本語では「プロフィール」といいますね。この profile、単に横顔という意味だけではありません。
Twitter に申し込むと、profile 「プロフィール」を書くように要求されます。つまり、自己紹介です。人を紹介する時にその人の「プロフィール」は、と書かれることが多いでしょう。
profile の元の意味は、a side view of the face だったのが、a short, vivid biographical and character sketch という意味を持つようになったのです。
Webster では、この意味は、Americanism とされています。Wiki によれば、
A word or phrase considered typical of American English, English as spoken in the United States;
なぜ、本来「横顔」だったのが、「人物紹介」の意味になったのか、私が考えるのに、また、大抵の人でも思いつくように、人は、他者に面と向かう時は、自分をよく見せるために、取り繕うものでしょう。よく見せるだけでなく、例えば、悲しんでいる時でも、悲しい顔をみせまいとする人も多いでしょう。宝くじが当たって嬉しくて仕方がなくても、それを隠そうとする人も多いでしょう。だから、人の顔を正面から見ても、その人の本当の姿が分からないかもしれません。ところが、こちらを向いてない場合、誰にも顔を見られてない時には、本当の「素顔」というか、本心が表れている可能性が強い、と考えませんか。人物紹介は、その人を正確に伝えるのが、本来の使命です。だから、取り繕った正面でなく、profile を描写しようというわけです。ただ、なぜ、そういう意味がアメリカで始まったか、考え始めますが、書き始めると長くなるので、また、そのうちに。

そこでです。鼻の形も、正面から見るより、横から profile で見たほうがはっきりします
イタリアルネッサンス時代の肖像画は、profile を描くのが、定番でした。そういう肖像画の最高傑作と言われているのが、Piero dell Francesca の、日本では、「ウルビーノ公夫妻の肖像」Ritratti di Federico da Montefeltro e di Battista Sforzaです。
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ウルビーノ公が、戦闘で右目を失っているので、左目の方の profile を描いたとされています。右目がないので、正面からの肖像画は、描かせなかったという説もありますが、この時代は、横顔の肖像画が主流でした。
下記サイトへ行くと、「中世イタリア ルネッサンスの美女」と題されて、美女の肖像画が沢山見られます。Botticelli の Primavera の中の Venus と Da Vinci の「白貂を抱く貴婦人」以外は、全部 profile です。
http://lohasstyle.jugem.jp/?eid=198
ウルビーノ公夫妻の鼻々?もこうしてみると、輪郭から形状がはっきりするでしょう。

Mr. Bean's nose も真横の画像がないので、残念ですが、それでもやや斜めでみると、long より short に見えるでしょう。
欧米で、nose を long だ short だ、と言い、nose bridge が high だの low だのというのは、nose を横から見たときの image です。
前からは、そういう風には見えないでしょう。昨日の「越路吹雪」の鼻もそうだったでしょう。
そして、ここが大事なところです。
「日本人感覚」では、「鼻の高さ・低さ」は、nose brigde の high, low でなく、鼻先の「高さ・低さ」であった。そこのところを比べれば、欧米人の鼻は、「日本人と比べて」どれでも「高い」「日本人とくらべて」低い鼻は、ない、ということです。
そして、明日の展示会で見れば分かるように、欧米人の「鼻先」は、「高さ」は、ほとんど同じなので、比べる必要はないわけです。違いがあるのは、nose bridge に起因する long, short の差です。だから、少なくとも英語とフランス語では、nose/nez を high, low/haut, bas で、describe することはない。

肖像画は、profile を描く伝統が近世・現代まで、続いていたら、もっといろいろな人の鼻を横から、まじまじ見ることができたでしょう。
画家が貧乏になって、モデルが雇えなくなって、仕方がないから、自分の顔を描く時代になると、自分の顔を鏡に映してみるわけですから、正面からしか見えません。だから、Rembrandt が数多く残した自分の肖像画には、profile はありません。
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Caravaggio が、駆け出しの頃、モデルが雇えないので、自分をモデルに描いた傑作 Self-Portrait as Sick Bacchus も profile ではなく、やや斜めながら正面画です。
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聞く所によると、映画俳優や有名モデルなどは、profile の写真は取らせない、ということです。そういう話聞きませんか。そういえば、Marilyn Monroe や Elizabeth Taylor の profile の写真って、見たことないですね。Star は、素顔を見せないということですか。

まあ、そんなわけで、今日は、「鼻の展示会」を延期して、昨日の「long nose は、高い鼻でない」の裏返しで、
short nose は、低い鼻ではない」を Mr. Bean's nose で実証しようとしたわけです。そして、「クレオパトラの鼻が低かったら」は、誤訳である、あれはパスカルさんの言うとおり、「短かかったら」とすべき、という歴史的重大?な発言をしてしまいました。さあ、歴史はどう判断するでしょうか。

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