「装飾写本」の「自然」、「ケルズの書」の場合。

Da Vinci など、イタリアルネッサンスの「画家」たちが、注文主の依頼によって描いた「絵」の中に、「風景」を、ちゃっかり?と描いていることを、私なりに説明しました。
  今日は、職業「画家」が登場する前に、中世の「装飾写本」の中に、「風景」などと「自然」がどのように描かれているか、について、紹介してみたい、と思います。
  実は、いろいろ調べてみると、かなりややこしくて、私の手に負えない感じですが、ちょっと前のブログで、大雑把に「装飾写本」のことを紹介したのが、意外と「参照数」、つまり、閲覧数が多く、皆さん関心があるようなので、この機会にもう一度、取り上げることにしました。
  そこでですね、まずは歴史的にも古く、もっとも人気があり、かつ、もっとも「美しい」と言われる The Book of Kells で、「自然」がどのように描かれているか、をまず見てみようと思ったわけです。この場合「自然」というのは、「風景」に限らず、花、動物(含む昆虫)など、自然の中に生きとし生きるものを含んでのことです。
  まずは、The Book of Kells は、どういうものか、みてみましょう。下の画像は、Wiki 日本語版で紹介されているページです。日本語版は、驚くなかれ?たった十行の説明しかありません。
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  英語版には、ながーく、それはそれは詳しい記述があります。
  http://en.wikipedia.org/wiki/Book_of_Kells
  上の図を見ても、ちょっと小さいので分かりにくいこともありますが、どこに「自然」が描かれているか分からないでしょう。もっとも、拡大しても分からないのが The Book of Kells の特徴ですが。
  下の画像は、Chi-Rho と呼ばれるもっとも有名なページです。Chi-Rho が何を意味するか、は、知る人は誰でも知っていますが、知りたい人は、下記の YouTube をみると、とってもよく分かる説明があります。もっとも英語ですが。ちょっとヒントをいえば、ようするに Christ のことです。
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  このページを取り上げている site があります。そこでは、こんな風に書いてあります。
  Spend time looking at it. See how much you can find. Can you find cats feeding kittens? Do you find angels? What about a moth or butterfly?
  どうですか、cat や moth や butterfly 見つかりますか。上に紹介したYouTube を見ると、よく分かります。
  しかし、まったく分からないことがあります。実は、Kindle edition で、Critically acclaimed writer とされる Simon Worralというひとの、
  The Book of Kells: Copulating Cats and Holy Men
  というのがあったので、$2.99 で安かったから、買ってみたのです。
  早速読んでみたら、その中で、Chi-Rho page のことについて特に書いたところがあって、そこにこんなことが書いてあります。
  Down at the bottom of the page inside a swirling labyrinth of pinks and purples there are two plump scriptorium cats, their paws clamped down onto the tails of two kittens that try to nibble at the Eucharist. Nearly always the cats of the Book of Kells are portrayed with teeth bared and backs arched, as though scribes wanted to sympolized the cruelty and violence of the universe.
下の画像は、その場面を拡大したものです。上の文の説明と一致するところもありますが、そんな風には、ぜんぜん見えないので困ってしまいますね。
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  更に、こんなことが書いてあります。
  And it took many hours of peering at the book before I realized that they are not fighting. They are copulating.
そんな風に見えますか。別のページのことか、と他のページを見ても、そんな様子のものはありません。
 Phallus-tipped columns slide into vagina-shaped orifices.
などとなると、目を皿のようにして、どこどこと探してみたけど、さっぱり見当がつきませんでした。
 ここで大事なことは、
 Almost all of the folios of the Book of Kells contain small illuminations like this decorated initial.
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 ということです。それが、超細密画で描かれているので、肉眼では見ることが出来ないのです。それにしても、当時は顕微鏡も確か拡大鏡もなかったはずで、どうやって、こんな細密な絵が書けたか、不思議だそうです。
 そこで、なぜ、そういう、テキストと関係ない絵がいっぱいあるか、ということです。
 それには、「装飾写本」という日本語で考えていては、分からないのです。日本語で「装飾写本」という場合、英語の illustrated manuscript illuminated manuscript と両方をさす場合が多いのです。
 Illustrated manuscript は、いわゆる「挿絵」つきの「本」や「写本」のことです。イラストつきの本です。
 それに対して、Illuminated というのは、適当な日本語がないので、「装飾」などと言ってますが、いわゆる「イリュミネィション」のことです。「クリスマスのイリュミネィション」というと、華やかに飾り立てる感じですが、それと同じことです。語源的には、illustrate と共通しているので、時々混同されるようです。
 少なくとも書物の場合は、illustrate は、テキストの内容を視覚的に説明する「挿絵」を描くことですから、本文の内容と違う「絵」は描けません。
 それに対して illuminate するのは、text の内容ではなくて、text の文字や、ページを飾り立てることですので、text の内容と関係ない「絵」を描いてもかまわないし、文字自体を飾り立てるために、文字の空白部分に「絵」を描くわけです。。というより、空白を残すことなく飾り立てようとするわけです。
  女性が、自分を illuminate するために、身に着ける earrings や necklace、更には、鼻に穴をあけてつける nose ring など、その女性の「中身」というか「人間の内容」?と関係ないでしょう。Tatoo などもそうです。しかし、そういう illumnation で、何かを表現しているつもりでしょう。反社会的態度とか。
 Illiminated manuscript にしてもそうで、The Book of Kells では、text の内容と関係ない cat, snake, moth, butterfly, rat, snake、bird、そしていろいろな flowers が illumination で使われていますIllustration ではなくて、です。
 絵画の場合は、主題や、絵画的構成がありますから、無関係な、動植物や風景を勝手に描くわけには行きません。
 Illuminated manuscript だから、illumination に「自然」の動植物、風景を自由に、「美しく」描くことが出来たのです。
 その場合、上に引用した文にあるように、自然の「美」とは限らず、the cruelty and violence of the universe を sympolized する絵も描いていたのでした。
 ということで、今日は、とりあえず、The Book of Kells の話だけになりましたが、illuminated manuscripts 全般については、明日続きを考えます。
 なお、The Book of Kells についての Documentary film を下記 YouTube のサイトで見れます。一本が10分くらいの長さで、確か、Part 5 まであります。
ひとつの Part が終わると次の part がすぐ見られるようになっています。The Book of Kells のその他の YouTube や、Celtic art に冠するいろいろな film があります。
http://www.youtube.com/watch?v=XbqhU262qdc&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=rRGQPJIO5CM&feature=related

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