ビデオ教材を作るのは、大変なこと。誰にもできることではなかった。

今日は、帝人教育システムの 「児童英語教室」 のために、どのような 「ビデオ教材」 を作ったか、という話です。
 ほんの一部だけの話です。というのは、当時は、「ビデオ教材」 を作るのは、いかに金がかかり、大変な作業と、人員が要ったか、
 ということを、理解していただくのが目的ですので、事細かにお話する必要はないからです。
 なお、当時のことについては、先の一連の entries があります。
SF Production 誕生秘話
「紙」から、ビデオへ、「ものつくり」進化する。

 まず、最初に作ったのは、単語を教えるためのビデオです。
 LPC に描いてある絵は、白黒でした。一枚だけならいいですが、何枚もの同じ LPC をカラーにしようとしたら、カラー印刷機がいります。そんなものは、高くて手がでません。
 カラーTV 時代に、モノクロの絵を見せては、子供には時代遅れに見えます。
 そこで、まず、それまでの LPC の絵に色を付けました。
 それを、一枚一枚、video camera で撮影します。
 すべての単語を staff の Hawaiian lady が録音します。
 LPC での単語学習は、8 or 9 枚で、ひとまとまりでした。
 撮影した LPC の画像を、先に紹介した LPC の見せ方の順番のように、
 L1, L2, L1, L2, L3.... のように、繰り返し出てくるように、編集します。
 最初出るときには、録音した単語の発音をかぶせます。時間は、3 秒です。
 二回目は、2 秒、三回目以降は、1 秒です。
 これを、何百枚の LPC に基づいてするのです。今から思うと、気の遠くなるような作業です。当時の 「ビデオ編集」 技術はこの程度でした。
 こういう 「ビデオ教材」 も作りました。
 こうして作った 「マスター」 を教室で使うためには、VHS に一本ずつ、30分のものなら、30分かけて copy しなければなりません。Copy すれば、画質は劣化します。
 
 形容詞を教えるビデオも作りました。
 形容詞を教えるときは、unmarked & marked を pair にして教えます。
 つまり、wide & narrow, high & low, clean & dirty, thick & thin のようにです。
 例えば、thick & thin の場合、日本語でいう 「厚い」「薄い」 ものだけでなく、「太い」「細い」 もの、「密度の濃い」「薄い」 ものなどのものがあります。
 Thick = 「厚い」 と思い込ませないためには、
 たとえば、
 「厚い本・薄い本」 を見せるだけでなく、
 「太い丸太」「細い丸太」
 更に、見た目でわかるような ポタージュのような「濃いスープ」、コンソメのような「薄いスープ」
 頭の毛のふさふさした人、てっぺんが薄くなった人の頭、
 こういうものを見せるといいのですが、実際の教室で、そういうものを準備することはできません
 しかし、一回限りのスタジオの撮影なら、そういうものを揃えることもできます。
 marked & unmarked の pair の形容詞を教えるのに、もっとも適切なものを揃えて、instructor 役が、そういうものを手に取って、教室で教えるよう動作を、二台のカメラを使って、最初は、全体像、次に手に持っているものを close up する、など、wiping, panning, zooming up/down と各種の撮影手法を使って撮影し、それを、また、編集するのです。
 こういうことを、特に訓練を受けてない学生が、機器を勝手にいじくらせておくと、ちゃんとできるようになるのです。それも市販する価値のあるものを。
 最初は、半信半疑だった、帝人教育システムの担当者も、学生というのは、すごいもんですね、と感心するようになりました。
 私に言わせれば、小学生だって、すごいものですよ。このことは、このあと、flipped classroom の話と関係しています。
 
 Flipped classroom の話が出たついでに、ここで指摘しておきたいことがあります。
 Flipped classroom では、先生の仕事は 「教える」 ことではなく、「導く」 ことです。
 何を 「導く」 か、といえば、
 生徒が主体的に取り組む、group や pair の projects を 「導く」 のです。
 Projects を完成するのに、もっとも必要とされるのは、group/pair の members 間の collaboration です。
 そういう collaboration を 「導く」 のには、自ら collaborationa した経験がものをいいます。
 そこで、思うのですが、今後 flipped classroom が主流になる、とすれば、そして、そうなるような気がしますが、
 教員養成に際して、今までのような、個人ワークの卒業論文を書かせるのでなく、私の SF Production のように、
 group/pair の collaboration による、ものつくりとか、カリキュラム開発という project-oriented な卒業研究をさせると、今後の日本の 「教育再生」 に役立つのではなか、と。What do you think? 
 どなたか、自民党教育再生実行部隊に教えてあげたら。

 ということで、このころは、とてもとても、
 Kahn さんのように、
 Let's use video to reinvent education.
と、言えるような状況ではなかった、
 ということが、お分かりできたでしょうか。
 言ってみれば、
Only SF Production used video to reinvent English education.
 だったのですが、それは、私企業の、学校外児童英語教育だけで、できたことでした。

 以下は、付けたしです。
 この帝人教育システムの児童英語教室は、親会社の帝人の社長が代わって、広げすぎた事業を縮小することになり、帝人教育システムが帝人を離れて、TESCO となってから、英会話教材直販事業が不振になって、倒産したため、全国展開をする前にぽしゃってしまいました。
 このビデオ開発は、文部省特定研究が基礎になっていました。そして、特定研究の趣旨は、研究成果を実用化し、普及させることでした。
 折角開発したものが使われなくなることを残念に思って、特定研究の生みの親だった、文部省の研究助成課長から、審議官になって見えた T 先生が、複数の私企業に、児童英語教室を受け継がないか、と話をしてくださったのですが、TESCO が高いことを持ちかけたので、実現しませんでした。確かサントリーとも話をした覚えがあります。
 しかし、この実績が、ヤマハ 100 周年記念に教育システム事業部を設け、児童英語教室を展開しようとしたヤマハの目にとまり、
 次の時代の video 教材開発につながることになります。
 つまり、video 制作が、だんだん簡単になり、
 Let' use video to reinvent education.
と、だんだん言いやすくなってきたのです。
 しかし、まだ、「教材」 の段階で、「学習材」 に到るのは、まだ、先のことでした。
 とりあえず、今日はここまでで。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック