21世紀の 「英学」 は、「基礎研究」 でもない 「応用研究」 でもない、パスツールに倣うもの。

 21世紀の、日本の 「英学」 を担うのは、誰か、
ということを、このところ盛んに言っています。
 
 その前に、21世紀の 「英学」 とは、どういうものか、そのイメージを描いてみましょう。
いきなりですが、Pasteur's Quadrant ということばを聞いたり読んだりしたことありますか。
Wiki に英語の項目がありますが、他の言語としては、
رباعية_باستور
があるだけです。 これ何語ですかね。 分かる人教えてください。 アラビア語かなあ?

Pasteur という名前は知らない人はないでしょう。 そうです。 「近代細菌学の開祖」 とされる、あのパスツールです。 多分日本人にもっとも馴染のあるのは、
「牛乳、ワイン、ビールの腐敗を防ぐ低温での殺菌法(パスチャライゼーション・低温殺菌法とも)を開発。」
でしょう。
こちらは、さすが、Wiki には、ほとんど言語の版があります。 世界的に有名な証拠です。 英語版は、こちらです。 英語版には、こう書いてあります。
a French chemist and microbiologist renowned for his discoveries of the principles of vaccination, microbial fermentation and pasteurization.

一方、quadrant ということばは、ほとんど聞いたことがないでしょう。 実際は、よく目にするものです。
例えば、こんなのがあります。
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 これは、政治家がどのような政策を目指しているか、quadrant で、わかりやすく示したものです。
 「タカ派」 「ハト派」 という二分法では、タカ派で 「小さな政府」 を目指す人もいれば、「大きな政府」 を目指す人もいて、その政策の違いがわかりません。 それを、上の図のように quadrant で、4つにわけると、「なるほどそうだったか」 と納得できませんか。
 同じ 「タカ派」 でも、政策の違いはあるし、同じ 「構造改革派」 でも、タカ派とハト派に別れる、
ということが、quadrant にすると、それぞれの立ち位置が目に見えてわかります。
あなたは、どの政策を支持しますか、と問われたら、
右上の quadrant で、縦軸はややしたよりで、横軸は、真ん中あたりです、
というように、答えることが出来ます。

こんなのもあります。
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Quadrant がどういうものか、一応理解出来たとして、肝心の Pasteur's quadrant に話に入ります。
これは、1999年に出版された、Donald E.Stokes という人の書名です。
副題が、Basic Science and Technological Innovation。
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 著者の Donald E.Stokes については、google したら、
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そこで、最初の NY Times の記事を開いてみたら、
Donald E. Stokes, 69, Leading Political Scientist
という見出しがあり、
Donald E. Stokes, a leading political scientist and former dean of Princeton University's Woodrow Wilson School of Public and International Affairs, died on Sunday in a Philadelphia hospital. He was 69 and lived in Princeton, N.J.
という、彼の死亡記事でした。 1997年のことです。 Pasteur's quadrant の出版年は、1997です。 NY Times の記事には、Pasteur's quadrant のことは、全然記されていません。 そこで、次の Princeton University のサイトを開いてみました。 それで納得できました。 そのサイトには、こんな見出しがあり、
Professor of Politics and Public Affairs Donald E. Stokes Dies; Led Woodrow Wilson School for 18 Years
記事の中に、
In recent years, Stokes studied the science policies of the federal government and the relationship between basic and applied science; he was principal author of The Federal Investment in Knowledge of Social Problems (1978) and was at work on a book titled "Pasteur's Quadrant: Basic Science and Technological Innovation."
 これで、納得が行きました。
 どういう納得か、というと、 political science (政治学) の学者である Stokes が、なぜ Pasteur か、と思っていましたが、The Federal Investment in Knowledge of Social Problems という本を書いているように、要するに学術分野への政府の補助金を出し方について、どういうものに出すべきか、という政策について研究していたわけです。
 私なりの結論を先走っていえば、役に立つかどうかなど、全く考えない 「学者」 好みの basic research、または一方の、役に立つものをいろいろ試しに作ってみる 「研究」 と、どちらに金を出すか、という 二者択一の方法でなく、Pasteur の研究のように、社会に役立つもの生み出す研究分野というものに、重点的に金をだすべし、というのが、Pasteur's quadrant と考えればいいでしょう。
 この私の解説を踏まえて、Wiki の次の文章を読めば、わかりやすいでしょう。
Pasteur's quadrant is a label given to a class of scientific research methods that both seek fundamental understanding of scientific problems, and, at the same time, seek to be eventually beneficial to society. Louis Pasteur's research is thought to exemplify this type of method, which bridges the gap between "basic" and "applied" research. The term was introduced by Donald Stokes in his book, Pasteur's Quadrant.
 このこと、Wiki の記事に添えられた画像とその解説を読むと、さらによくわかります。
画像
このような解説があります。
Applied and basic research
As shown in the following table, scientific research can be classified by whether it advances human knowledge by seeking a fundamental understanding of nature, or whether it is primarily motivated by the need to solve immediate problems.

でどうなるか、というと、
The result is three distinct classes of research:
Pure basic research (exemplified by the work of Niels Bohr, early 20th century atomic physicist).
Pure applied research (exemplified by the work of Thomas Edison, inventor).
Use-inspired basic research (described here as "Pasteur's Quadrant").


わかりやすい例でいうと、山中教授の iPS 細胞は、Pasteur's quadrant の研究です。 期待された STEP もそれを目指したものでした。
伊藤・益川教授のノーベル賞をもらった研究は、一番目の pure basic research ですね。 よく言われる紙と鉛筆があればできる研究です。
Google や Apple など IT 企業やトヨタなど自動車企業の研究は、二番目の pure applied research といえます。

余談ですが、ノーベル賞をもらえるのは、一番目の研究が主です。 山中教授の場合、異例だと言われてましたね。
Bill Gates や Steve Jobs は、Larry Page たちは、いかに社会に役立つものを作っても、ノーベル賞は、もらえないですね。 私に言わせれば Web を開発した Tim Berners-Lee など、まさにノーベル賞に値すると思いますが、ああいう役に立つものを発明した人には、ノーベル賞は出ないのです。 別の、もっと権威ある賞を作って表彰すべきでないかな。
Bill Gates なんか、Gates 賞を創設して、まず自分を表彰したらどうかな。

 余分なはなしでした。
 Stoke は、Pasteur 以外の二つの分野を代表する人として、Niels Henrik David Bohr と Thomas Edison の名前を出しています。
 今日は、長くなったので、明日この続きで、この二人のことを紹介しながら、Pasteur's quadrant の話をもう少し突っ込み、それによって、「21世紀の英学」 のあり方について、私の考えをお話します。

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