『英語ものしり帖』「股の巻」<股くぐりの「また」>

股くぐりの「また」

古代中国「韓信」の故事

歌舞伎の『助六江戸桜』(市川家の場合)で、助六とその兄の曽我十郎が扮する白酒売新兵衛が、通行人に「股くぐり」をさせるシーンがあります。
この「股くぐり」、日本では有名ですが、世界的にもっと古くから知られた、実際にあったという「股くぐり」の話があります。

古代中国の英雄韓信の「股くぐり」の逸話です。
画像


韓信の Wiki から紹介します。
ある日のこと、韓信は町の若者に「てめえは背が高く、いつも剣を帯びているが、実際には臆病者に違いない。その剣で俺を刺してみろ。できないならば俺の股をくぐれ」と挑発された。韓信は黙って若者の股をくぐり、周囲の者は韓信を大いに笑ったという。その韓信は、「恥は一時、志は一生。ここでこいつを切り殺しても何の得もなく、それどころか仇持ちになってしまうだけだ」と冷静に判断していたのである。この出来事は「韓信の股くぐり」として知られることになる。
http://bit.ly/2p5TqNw
この英語版には、同じことが、次のように書かれています。
On another occasion, a hooligan saw Han Xin carrying a sword and challenged him to either kill him or crawl through between his legs. Han Xin knew that he would become a criminal if he killed him, hence instead of responding to the taunts, he crawled through between the hooligan's legs and was laughed at.
https://en.wikipedia.org/wiki/Han_Xin
下の URL で、この股くぐりの様子を更にいろいろな画像で見ることができます。
http://bit.ly/2nQ8IWu
YouTube で映画化されたものを見ることができます。
http://bit.ly/2po6kDx

「また」は「また」でも、この「胯」こそ、真の「また」


上記英語の Wiki の Legacy の項に、漢語入りで、こんな説明があります。Legacy とは、「故人が残した遺産」ともいうべきものです。ここでは、韓信の、この故事が、後代に残した遺訓ともいうべきものです。日本語の韓信の Wiki にはない項目です。
Shame of crawling through between someone's legs (胯下之辱): Used to describe a humiliating incident. This idiom originated from the incident when Han Xin was bullied by a hooligan.
「胯下之辱」に甘んじても、すべきことはせよ、という遺訓でしょうか。

日本語で「股をくぐる」というのは、英語では、crawl through between the legs になっていました。
先にくどく説明したように、「股」というのは、脚のことで、股をくぐるには、開いた両脚の間を這ってくぐるので、crawl through between the legs になるわけです。
それが、漢語では、「胯下」をくぐるになっています。
'between the legs' では、「胯下」の感じは出ませんね。

between or under

「また」の場所を示す英語は、crotch です。
そこで、
"crawl under the crotch" と google したら hits 数は、only 6 でした。出てきた英文は、全て「またを這ってくぐる」状況を述べるものでした。
一方、
"crawl between * legs" で google したら 1,290,000 も hit しました。
これは、やっぱり。crawl する時は、下の地面の方に顔が向いていて、目にするのは両側にある legs で、上にある crotch には、目が向かないから、そうなるのでしょうね。

そこで、crawl を取って、"under the crotch" で google したら、なんと、 573,000 の hits です。
出てきたサイトを見ると、その多くは、tailor 関係でした。要するに、先に紹介した、ズボンの寸法を測るときの「股下」の意味で使われているのです。
下の URL で、"under the crotch" の画像群を見てください。納得がいきます。
http://bit.ly/2rd1ZCX

「胯下」の「胯」は、『字源』でしらべると、読みは「コ」です。そして、その意味は、「また、両股の間」、です。
考えてみれば、這ってくぐるのは、確かに両股の間ですが、それは、「また」の下になります。「胯」こそ、まさに「また」の漢字であったわけです。
だから、「またくぐり」を漢字で書くときは、胯くぐり」と書くのが、もっとも正しいわけです。
「股くぐり」の「股」では、「股」はやはり「脚」のことですから、「またの下」を這って通るという意味が出ていませんね。

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