Curation とは?

 美術館や博物館で、展覧会の企画や、所蔵品の管理・運営・購入などを担当する人は、日本では「学芸員」
と呼ばれています。
Wiki によれば、
学芸員(がくげいいん)とは、日本の博物館法に定められた、博物館(美術館・天文台・科学館・動物園・水族館・植物園なども含む)における専門的職員および、その職に就くための国家資格のことである。欧米の博物館・図書館・公文書館では職種としてキュレーター(curator)が置かれているが、日本ではキュレーターを学芸員と訳している。
https://bit.ly/2Ha0uPP
 Wiki には、いろいろな言語版があります。そこで、メニューの多言語を見てみると、
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 ”学芸員”の Wiki には、中国語しか多言語版はないのです。つまり、”学芸員”にあたる、英語などの他の言語はなく、同じ漢字の中国語しかない、ということです。試しに中文版を覗いてみたら、たった3行の記述しかありません。中国でも、馴染みのない言葉のようです。
 そこで、”キュレーター” でgoogle すると、その Wiki がありました。
キュレーター(英語: curator)とは、博物館(美術館含む)、図書館、公文書館のような資料蓄積型文化施設において、施設の収集する資料に関する鑑定や研究を行い、学術的専門知識をもって業務の管理監督を行う専門職、管理職を指す(※curate―展覧会を組織すること)。英語由来の外来語であり、日本語でもほぼ同じ意味で使われている。

日本にキュレーターという語が入ってくる2000年代までは、学芸員という語が使われていた。現在は学芸員とキュレーターが混在している。なお、「学芸員」は一般的にはcuratorと訳される。
https://bit.ly/2JaBlrB
 他言語版をみてみたら、ほとんどの言語にキュレーターにあたる言葉があることがわかります。
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 これで、わかったことは、確かに「キュレーター」というカタカナ語は日本語にありますが、それは、もっぱら、英語国の curator や、他の国の curator にあたる語句に当てた言葉で、日本の学芸員に対しては、少なくとも今までには使われることはなかった、ということです。
 「学芸員の仕事」というサイトがあります。そこに、
欧米の学芸員との違い
http://careergarden.jp/gakugeiin/oubei-chigai/
 どのように違うか、自分で確認してみてください。

 ところが、テレビの美術番組などで、欧米の curator が登場することがありますが、ほとんど例外なく、その時の肩書は「学芸員」になっています。ご本人が後から知ったら、おそらく激怒するかもしれませんよ。
 この後説明するように、欧米の Curator の地位は、日本の学芸員と比較できないくらい、高く、大学教授なみですから。それが、学芸員と紹介されていたら、大学教授が、美術館の事務員並に紹介されたことになります。

 Curator とは、何をする人か、まずは語源から調べましょう。

A curator (from Latin: cura, meaning "to take care")[1] is a manager or overseer. Traditionally, a curator or keeper of a cultural heritage institution (e.g., gallery, museum, library, or archive) is a content specialist charged with an institution's collections and involved with the interpretation of heritage material.

次は Wiki の定義です。
A traditional curator's concern necessarily involves tangible objects of some sort — artwork, collectibles, historic items, or scientific collections. More recently, new kinds of curators have started to emerge: curators of digital data objects and biocurators.
https://en.wikipedia.org/wiki/Curator

語源の定義では、現代まで続いている美術館や博物館の curator の意味ですが、Wiki になると、ブロック体で示したように、今回のブログで取り上げる digital curation が出ています。

今 digital curation と言いましたが、curation の語源を調べると、

late 14c., curacioun, "curing of disease, restoration to health," from Old French curacion "treatment of illness," from Latin curationem (nominative curatio), "a taking care, attention, management," especially "medical attention," noun of action from past-participle stem of curare "to cure" (see cure (v.)). From 1769 as "management, guardianship."
美術館の curator の仕事の意味で使われるようになったのは、1769年以降のことになっています。

 こういうことの詮索はさておいて、curator がどれくらい偉い人か、わかる話をしましょう。

Dan Brown の The Da Vinci Code は、映画化されて、日本でも大当たりしました。
 Wiki で、その原作のあらすじを見ると、
ルーヴル美術館で館長のジャック・ソニエール(76歳)が、レオナルド・ダヴィンチのウィトルウィウス的人体図を模した猟奇的な形の死体で発見されたと伝えられる。
館長になっています。
 Wiki 英語版を見ると、
Louvre Curator and Priory of Sion grand master Jacques Saunière is fatally shot one night at the museum by an albino Catholic monk named Silas, who is working on behalf of someone he knows only as the Teacher, who wishes to discover the location of the "keystone," an item crucial in the search for the Holy Grail.
 Curator になっているでしょう。つまり、Louvre 美術館の館長は、curator なのです。これを、「学芸員」と訳していたら、大間違いになります。

 日本の美術館や博物館で企画展が行われると、「図録」が発行されます。企画展が終わった後から手に入れようとすると、その企画展をおこなった美術館や博物館のショップへ行って見つけるしか仕方がありません。書店には出ていません。出版社が発行したものではないからです。

 欧米の美術館や博物館が企画展を行うと、図録などありません。代わってあるのは、その企画展を特集した立派な美術書が、美術出版社から発売されます。その著者/編者は、その企画展を担当した curator です。
私の美術書のコレクションにそういう企画展の美術書がいっぱいあります。

 美術館/博物館の curator (学芸員ではないですよ)は、それくらい、学識・見識すぐれ、社会的地位の高い人がついている仕事なのです。
 有名美術館の、ある部門の責任者の curator が、退職して新しい人に代わると、そのことは、重大ニュースになります。

 なぜ、くどくど、こういう話をしているか、というと、digital curation をする、というか、そういうことのできる curator は、それぞれの分野において、それくらいの学識と見識が要求される、ということに、気がついてほしいからです。

 美術館/博物館の curator は、大学の美学などの専門分野で養成され、博士号をもっているのが普通です。
しかし、digital curator を養成し、博士号を与える大学の専門分野はまだ確立されているとは言えない、というのが私の考えですが、Am I wrong?

British Library の curator 求人広告に、こんなことが書いてあります。2017年の求人です。
You will have a good understanding of digital scholarship, preferably gained from working in a research library, academic or other appropriate environment. You will have excellent information technology skills, including web-based skills and experience of the tools and technologies that support digital scholarship. Excellent Project Management, oral and written communication skills are also essential for this post.
https://bit.ly/2vS6Mhw
こんなことができるような訓練を与えてくれる academic institutes はあるのかな?

New York Public Library の digital curator を名乗る人がこんなブログ記事を書いています。2011年のことですから、その時代は、まだ digital curator が珍しかったのですね。

Allow me to introduce myself — my name is Doug Reside, and in February I became the first Digital Curator for the Performing Arts at The New York Public Library. The position of Digital Curator is a fairly new one (not just at NYPL, but in the world in general), and those of us who hold the title do different kinds of things depending on the particular needs of our institutions. I thought it might be useful, then, for me to explain what it means for NYPL to have created this position, and how it will benefit you as a user of our collections.
https://www.nypl.org/blog/2011/04/04/what-digital-curator

日本で「キュレーション」という言葉を流行らせたのは、2011年に出版された、佐々木俊尚『キュレーションの時代』です。
発売当初から、現在まで76の Customer Review があり、毀誉褒貶さまざまです。
このサイトでみれます。
https://amzn.to/2VhuZsa
これらの customer review を読むと(忍耐力がいりますよ)、日本での キュレーションの受け止め方がわかります。

知らないうちに長くなりました。
大体こんなところで、digital curation は、どういうものかわかったでしょうか。

次回の続きで、もう少し簡単に説明します。

この記事へのコメント

まき
2019年05月12日 12:28
I recommend you some books written by Maha Harada.

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