複製絵画から、映像絵画鑑賞に至る道。Tangible から Intangible へ。
昭和の20年代から40年代頃までは、美術館に出かける以外に絵画作品を見ようとすれば、美術の教科書に載っている複製画を見るとか、カラーの画集を買うしか、手はなかったですね。
画集は高くて、おいそれと個人で持つことはできなかったですね。
教科書に載っているのは、ゴッホの「ひまわり」とか、ロダンの「考える人」、日本人の好きなミレーの「晩鐘」などの超有名作品くらいでした。シャガールやミロの絵は、私の学校時代の教科書に載ってませんでしたね。あなたの場合はどうですか。
1960年にテレビのカラー放送が始まり、1964年の東京オリンピックを機にカラーテレビ受像機が家庭に普及し始めましたが、美術番組が登場するのは、それから、12年も経ってから、1976年にNHK教育テレビで『日曜美術館』が開始されるまで待たなければなりませんでした。
これによって初めて、私達は、少なくとも私は、テレビ画面で絵画の映像(後から説明するように「映像」であって「画像」ではありません)を見ることができるようになりました。
しかし、放送されるものは一過性であって、気に入った絵画があっても、それを録画して集めることができるようになるには、普通の人にとっては、1987年にVHSビデオレコーダーが発売されるまで待たなければなりませんでした。
録画しても、自由に編集できるわけでなく、ただ、後から流して見るだけのことでした。好きな絵画だけ取り出して見ることはできませんでした。
それより以前 1981年にパイオニアから、家庭用レーザーディスクプレーヤーが売り出され、映画やカラオケのソフトだけでなく、美術作品をいろいろ編集(一種の curation ですね)したソフトが売り出されました。美術館に展覧会を見に行くと、業者が店を出していて、宣伝していましたね。結構高価で、普通の人には、ちょっと手が出ませんでした。
そうしたら、ソフトピアジャパンを作ったりして、今で言うところの ICT に熱心だった、当時の梶原岐阜県知事の肝いりだったと思うのですが、岐阜県美術館が、レーザーディスクの美術作品を集めて、検索機能をつけて、どういう名前の部屋か忘れましたが、世界の美術作品をレーザーディスクで見れる部屋を作りました。予約なしに個人で勝手に見ることができたはずです。私は何度も出かけて、あれで世界の名画をいろいろ見ることができました。
とかくするうちに、民放でもいろいろ美術番組が始まりました。その中の長寿番組で今でも続いているのは、テレビ東京(東海地方はテレビ愛知)、BS Japan で 2000年4月8日に始まった『美の巨人たち』です。2019年の4月からは『新美の巨人たち』と名前が変わりました。
BS日テレで毎週火曜日の9時から放送されている『ぶらぶら美術・博物館』(通称「ぶら美」)が始まったのは、2010 年4月6日でした。
現在定期的に放送されている美術番組は、この3つぐらいです。
少し前までは、もっといろいろな美術番組がありましたが、いつの間にか全部無くなってしまいました。
今思い出すと、こんなのがありました。NHKの番組です。
BS 朝日には、こんなのがありました。DVD で出ています。
BS日テレには、こんな番組がありましたよ。
この番組より前に、BS日テレ には『幻想美術館』がありました。
また、NHK には、『天才画家の肖像』とか『世界美術館紀行』というのがありましたね。
また、NHKが、年に一回特集した美術番組がありました。
リストアップします。
第1回:西洋美術(1998年11月3日放送)
第2回:日本の美(1999年11月2日放送)
第3回:20世紀アート(2001年1月3日放送)
第4回:イタリア美術(2001年12月22日放送)
第5回:国宝(2002年12月15日放送)
第6回:印象派の時代(2004年1月4日放送)
第7回:ルーブル名宝(2004年12月23日放送)
第8回:うるわしのアジア仏の美(2005年12月10日放送)
第9回:世界の至宝・工芸(2007年1月28日放送)
第10回:世界の名建築(2008年1月27日放送)
こうして振り返って見ると、結構いろいろな美術番組がありました。
実を言うと、私は、『日曜美術館』を始め、ここに挙げた美術番組を全部録画して、きれいにラベルを作って、保存しているのです。これら以外にもまだいっぱいあります。
私の美術鑑賞は、美術館に行って実物を見る、画集などで複製画を見る、という tangible な作品鑑賞から始まって、テレビ番組とその番組を録画した映像による複製という、ここからは、intangible な作品鑑賞に移って行ったのです。時代の流れでもなりました。
美術館や画集による作品鑑賞は、それぞれの curator が curation したものを、それに従って見る、という、誰しもそういうものだ、と思っていた(過去形にしてある意味は後ほど分かります)鑑賞法でした。
テレビ番組の場合は、curator や美術史家、あるいは、美術に造詣のある director が、curation した作品展示を、言ってみれば言われるがままに、鑑賞するという、これも考えてみれば当たり前(だった)鑑賞法でした。
こういう鑑賞法で、私自身は、古今東西の美術作品の多く、というより、ほとんどのものを目にすることができ、た、だけでなく、画集を買ったり(私の西洋絵画の画集のコレクションはすごいですよ)、TV番組を片っ端から録画、するだけでなく、きちんとラベルをつけて整理することにより、家にいながらにして、いつでも好きなときに好きな画家の絵画を見ることができる状況になりました、が、ことは、そうは簡単ではなかったですね。
まずは、画集は大きくて重くて、とても寝転んで気楽に見れるものではなかったですね。また、DVD/RD は、いちいち Player に入れて、テレビ画面で見るのは、結構面倒なものです。みなさんも経験あるでしょう。
更には、こういうことがあります。ある画家の作品をみたい場合は、その画家の画集、DVD/RD でも画家ごとの作品が収録されている場合が多いので、そのまま見ることができます。
ところが、例えば、いろいろな画家が描いた Venus の絵画を見たいとか、Salome の絵画を見たい、と思ったら、画集にしろ、DVD/RD にしろ、簡単にできないことは、わかるでしょう。
たとえ、あれこれ見つけてきても、一枚一枚を取り出して、好きな順番に並べる(これ一種の curation ですね)というようなことは、不可能です。
大体、普通の人は、私もそうでしたが、そんなことできるとは思ってもいなかったので、そんなことしようとも思わなかったですね。つまり、美術作品の curation をするなどということは、全く頭に浮かびませんでした。
私に限らず、tangible な美術作品を扱う professional curator 以外に、そんなことをしてみようと思う人はいなかった、はずですね。Am I right?
で、この続き何が言いたいか、次回にしましょう。
画集は高くて、おいそれと個人で持つことはできなかったですね。
教科書に載っているのは、ゴッホの「ひまわり」とか、ロダンの「考える人」、日本人の好きなミレーの「晩鐘」などの超有名作品くらいでした。シャガールやミロの絵は、私の学校時代の教科書に載ってませんでしたね。あなたの場合はどうですか。
1960年にテレビのカラー放送が始まり、1964年の東京オリンピックを機にカラーテレビ受像機が家庭に普及し始めましたが、美術番組が登場するのは、それから、12年も経ってから、1976年にNHK教育テレビで『日曜美術館』が開始されるまで待たなければなりませんでした。
これによって初めて、私達は、少なくとも私は、テレビ画面で絵画の映像(後から説明するように「映像」であって「画像」ではありません)を見ることができるようになりました。
しかし、放送されるものは一過性であって、気に入った絵画があっても、それを録画して集めることができるようになるには、普通の人にとっては、1987年にVHSビデオレコーダーが発売されるまで待たなければなりませんでした。
録画しても、自由に編集できるわけでなく、ただ、後から流して見るだけのことでした。好きな絵画だけ取り出して見ることはできませんでした。
それより以前 1981年にパイオニアから、家庭用レーザーディスクプレーヤーが売り出され、映画やカラオケのソフトだけでなく、美術作品をいろいろ編集(一種の curation ですね)したソフトが売り出されました。美術館に展覧会を見に行くと、業者が店を出していて、宣伝していましたね。結構高価で、普通の人には、ちょっと手が出ませんでした。
そうしたら、ソフトピアジャパンを作ったりして、今で言うところの ICT に熱心だった、当時の梶原岐阜県知事の肝いりだったと思うのですが、岐阜県美術館が、レーザーディスクの美術作品を集めて、検索機能をつけて、どういう名前の部屋か忘れましたが、世界の美術作品をレーザーディスクで見れる部屋を作りました。予約なしに個人で勝手に見ることができたはずです。私は何度も出かけて、あれで世界の名画をいろいろ見ることができました。
とかくするうちに、民放でもいろいろ美術番組が始まりました。その中の長寿番組で今でも続いているのは、テレビ東京(東海地方はテレビ愛知)、BS Japan で 2000年4月8日に始まった『美の巨人たち』です。2019年の4月からは『新美の巨人たち』と名前が変わりました。
BS日テレで毎週火曜日の9時から放送されている『ぶらぶら美術・博物館』(通称「ぶら美」)が始まったのは、2010 年4月6日でした。
現在定期的に放送されている美術番組は、この3つぐらいです。
少し前までは、もっといろいろな美術番組がありましたが、いつの間にか全部無くなってしまいました。
今思い出すと、こんなのがありました。NHKの番組です。
BS 朝日には、こんなのがありました。DVD で出ています。
BS日テレには、こんな番組がありましたよ。
この番組より前に、BS日テレ には『幻想美術館』がありました。
また、NHK には、『天才画家の肖像』とか『世界美術館紀行』というのがありましたね。
また、NHKが、年に一回特集した美術番組がありました。
リストアップします。
第1回:西洋美術(1998年11月3日放送)
第2回:日本の美(1999年11月2日放送)
第3回:20世紀アート(2001年1月3日放送)
第4回:イタリア美術(2001年12月22日放送)
第5回:国宝(2002年12月15日放送)
第6回:印象派の時代(2004年1月4日放送)
第7回:ルーブル名宝(2004年12月23日放送)
第8回:うるわしのアジア仏の美(2005年12月10日放送)
第9回:世界の至宝・工芸(2007年1月28日放送)
第10回:世界の名建築(2008年1月27日放送)
こうして振り返って見ると、結構いろいろな美術番組がありました。
実を言うと、私は、『日曜美術館』を始め、ここに挙げた美術番組を全部録画して、きれいにラベルを作って、保存しているのです。これら以外にもまだいっぱいあります。
私の美術鑑賞は、美術館に行って実物を見る、画集などで複製画を見る、という tangible な作品鑑賞から始まって、テレビ番組とその番組を録画した映像による複製という、ここからは、intangible な作品鑑賞に移って行ったのです。時代の流れでもなりました。
美術館や画集による作品鑑賞は、それぞれの curator が curation したものを、それに従って見る、という、誰しもそういうものだ、と思っていた(過去形にしてある意味は後ほど分かります)鑑賞法でした。
テレビ番組の場合は、curator や美術史家、あるいは、美術に造詣のある director が、curation した作品展示を、言ってみれば言われるがままに、鑑賞するという、これも考えてみれば当たり前(だった)鑑賞法でした。
こういう鑑賞法で、私自身は、古今東西の美術作品の多く、というより、ほとんどのものを目にすることができ、た、だけでなく、画集を買ったり(私の西洋絵画の画集のコレクションはすごいですよ)、TV番組を片っ端から録画、するだけでなく、きちんとラベルをつけて整理することにより、家にいながらにして、いつでも好きなときに好きな画家の絵画を見ることができる状況になりました、が、ことは、そうは簡単ではなかったですね。
まずは、画集は大きくて重くて、とても寝転んで気楽に見れるものではなかったですね。また、DVD/RD は、いちいち Player に入れて、テレビ画面で見るのは、結構面倒なものです。みなさんも経験あるでしょう。
更には、こういうことがあります。ある画家の作品をみたい場合は、その画家の画集、DVD/RD でも画家ごとの作品が収録されている場合が多いので、そのまま見ることができます。
ところが、例えば、いろいろな画家が描いた Venus の絵画を見たいとか、Salome の絵画を見たい、と思ったら、画集にしろ、DVD/RD にしろ、簡単にできないことは、わかるでしょう。
たとえ、あれこれ見つけてきても、一枚一枚を取り出して、好きな順番に並べる(これ一種の curation ですね)というようなことは、不可能です。
大体、普通の人は、私もそうでしたが、そんなことできるとは思ってもいなかったので、そんなことしようとも思わなかったですね。つまり、美術作品の curation をするなどということは、全く頭に浮かびませんでした。
私に限らず、tangible な美術作品を扱う professional curator 以外に、そんなことをしてみようと思う人はいなかった、はずですね。Am I right?
で、この続き何が言いたいか、次回にしましょう。
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