オペラよもやま話 その5 オペラと歌舞伎


オペラと歌舞伎は似ている、と言われます。
そうだから、でしょうか、今回あの事件があって、残念ながら実現しませんでしたが、オリンピック文化ブログラムの一つとして、ドミンゴと市川海老蔵との、オペラ歌舞伎「共演」がありました。
それで中止になったか、と思ったら、そうではなくて、こういう記事がありました。

海老蔵さん、オペラ歌手と共演 東京五輪文化プログラム

2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会は24日、大会の公式文化プログラム「東京2020 NIPPONフェスティバル」で、歌舞伎俳優の市川海老蔵さんとオペラ歌手が共演するKABUKI×OPERA「光の王」を来年4月18日に東京体育館で開催すると発表した。
 海老蔵さんはソプラノ歌手のアンナ・ピロッツィさん(イタリア)、バス・バリトン歌手のアーウィン・シュロットさん(ウルグアイ)らと舞台に立ち、公演では歌舞伎のストーリーにオペラの楽曲が随所に織り込まれる。

https://bit.ly/2NCgVbz
海老蔵さん、このプログラムの後、5月には13代目市川團十郎を襲名します。
市川宗家には歌舞伎十八番があります。詳しくはこのサイトで。https://bit.ly/3alqx43
その中で、もっとも上演回数の多いのが『助六』です。海老蔵さんも演じています。
海老蔵.jpg

この助六 google image search すると、いろいろな役者の「助六」の画像が出てきます。みんな同じ格好です。この URL を click/tap して見てみてください。https://bit.ly/2u9WQmd
例えば、これは、私のもっとも好きな片岡仁左衛門の「助六」です。
Screenshot 2020-01-17 at 9.20.02 AM.png

海老蔵も仁左衛門も知らない人には、全く同じに見えるかもしれません。
「助六」の舞台は、三浦屋の外です。こんな様子です。
Screenshot 2020-01-18 at 1.58.26 PM.png
”歌舞伎 助六 舞台” でGoogle image search した結果のサイトです。
https://bit.ly/2FWVGx0
この URL を click/tap して見てみてください。どの公演も全く同じセットです。

私が初めて『助六』を見たのは、1960年(昭和35年)の東京オリンピックの時の、文化プログラムの一貫で(だったと思います)、歌舞伎座で上演された、十一代目市川團十郎の『助六由縁江戸桜』でした。揚巻は先代中村歌右衛門でした。
二度目に見たのは、何年だったか忘れましたが、仁左衛門が、まだ片岡孝夫時代の『助六曲輪初花櫻』でした。揚巻は、坂東玉三郎。当時この二人のコンビは「孝玉コンビ」と呼ばれ、大人気でした。
“孝玉” で Google すると、このようなサイトがいっぱい出てきます。
Screenshot 2020-01-18 at 2.45.13 PM.png
で、ここで気が付きましたか。團十郎と仁左衛門の場合で、「助六」の標題が違っていることに。
知る人は知っていますが、「助六」は演じる役者によって、『外題」が違うのです。
「助六」の Wiki にその表が出ています。
Screenshot 2020-01-18 at 9.04.33 AM.png
https://bit.ly/2R2XZVq
「孝玉コンビ」の後、仁左衛門・玉三郎の『助六曲輪初花櫻』、12代目市川團十郎と海老蔵の『助六由縁江戸櫻』、先代松本幸四郎の『助六曲輪江戸櫻』を、録画で見ました。歌舞伎通には、違いが分かるでしょうが、素人目には、役者の違い以外にどこが違うか、別に気になりませんね。舞台セットも小道具も全く同じです(見た目はそうです)
ただ、通人がまたくぐりの後の花道で、その時々の世間で話題になっていることを取り上げて笑いを誘うセリフは、公演ごとに違うのは、知る人は知っていることです。

では、オペラはどうでしょう。Mario del Monaco が、初来日した時、特に二度目の来日で「道化師」を演じた時に、オペラの「團十郎」と言われました。
この時の「道化師」は、録画されて DVD で発売されています。
道化師.jpg

その customer review の一つに、こんなことが書いてあります。
「オペラと歌舞伎」にあって、まったく同じ芸風であった11代目團十郎の舞台が想い出されます。まさに千両役者でありました。https://amzn.to/30tQHxe

そこで、”Pagliacci canio” で、Google image search をしてみると、「助六」とは違って、さまざまな衣装をつけた Pagliacci が出ています。有名歌手ですと、
左から Domingo, Pavarotti, Alagna です。
Screenshot 2020-01-18 at 10.47.54 AM.png
こんな Pagliacci もあります。
Screenshot 2020-01-18 at 10.54.18 AM.png

舞台装置や小道具に至っては、それぞれ全く違っています。
ところで、下の2つの画像は、METにおける同じオペラの同じ場面です。同じオペラに見えますか。どちらも La Traviata の第1幕の「乾杯の歌」の場面です。左の画像では、Violetta ただ一人しか女性はいません。後は黒い衣装の男ばかりです。
Screenshot 2020-01-18 at 1.36.49 PM.png
耳に聞こえる音楽や歌は、同じです。聴くと観るとは大違い、ということです。
歌舞伎では、同じ演目で、舞台や登場人物は、その衣装がすっかり変わるということはありえません。

と、このように、歌舞伎とオペラは、見た目が全く違います。

La Traviata は、「一生に一度は観るべきオペラ」と言われますが、Pretty Womanの Vivian が、左の画像の La Traviata を MET で見たら、オペラはもうこりごり、と思ったかも知れませんよ。

実演にしろ録画にしろ、歌舞伎のつもりでオペラを観ると、Pretty Woman の Edward が言うように、次また観たいという人と、もう二度の観たくない人の分かれ道が、観るオペラによって、左右されることになりかねないのです。

では、歌舞伎とオペラが、実は、こんなに違うものだ、とわかったとして、どうしてこんな違いがでてきたのでしょうか。その話は長くなるので次回以降に。


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