オペラよもやま話 その7 オペラと歌舞伎の上演形式の違い アラカルトとフルコース


このポスターを見てください。今年の1月の歌舞伎座の公演です。
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1月2日から26日まで、同じ演目(外題)で、午前の部と午後の部が公演されます。以前は中日で、午前と午後の演目が、入れ替わりましたが、最近の傾向は入れ替えなしです。
午前は、4っつ、午後は3つの演目が演じられていますが、それらの間に、なんの関係もありません。
そして、現代の歌舞伎公演では、作品の全体を上演することはまれで、一部分だけを上演するようになっています。
この1月公演午前の部の二番目の『奥州安達原』は、三段
目の後半だけ(だそうです)4番目の『河内山』も、「松江邸広間より玄関先まで」となっていますから、一部だけのようです。(私はそんなにくわしくないので)

こういう上演形式は、オペラの場合にすれば、
一日の公演に午前の部と午後の部があり、午前の部では、
①『トスカ』の第二幕、②『バラの騎士』の、バラの騎士の登場場面と、その後の Octavian と Sophie の Duet、③合唱団を登場させて、『ナブッコ』の「行け、わが想いよ、黄金の翼に乗って」の、あの有名な合唱を歌わせる、というようなものです。
こうやって見たら、もしこんな上演があったら見てみたいな、と今更思いましたが、こんなことは、今までも、これからもありでないことです。
シーズンのあるオペラ公演は、原則、一日1公演1演目で、同じ演目を2日続けて上演することはありません。それは、オペラ歌手は一日歌ったら、3日間くらいは、喉を休めなければならないからです。
余談ですが、Kristene Opolais が、2014 年、前日4月4日の夜、Puccini の Madama Butterfly を歌った翌日の5日の、それも Matinee (昼間の公演)に、La Boheme の Mimi を歌って、MET では、前代未聞のこ
とと話題になりました。この間の詳しい事情は、Wiki に記載されています。
https://en.wikipedia.org/wiki/Kristine_Opolais


話を戻して、
歌手の喉を休めるために、翌日は同じ演目が上演できないからと言って、開店休業にするわけには行かないので、翌日は別の演目が上演されます。その演目で歌った歌手も、翌日は休みますから、その翌日はまた別の歌手で別の演目が上演されます。
MET などの大劇場は別にして、ヨーロッパの地方都市の歌劇場では、一週間に4つくらいの違う演目が上演され、同じ演目が、3日か4日の間を置いて、4,5回繰り返して上演される、というのが普通です。そして、ひと回りすると、また次の4つくらいの演目が、同じように間を置いて上演され、これが、シーズンを通じて行われます。
地方都市のオペラ劇場の観客は地元の人が主体で、シーズンチケットを買って、冬の長い暗い夜を、シャンデリアの光輝くオペラ劇場で暗さを忘れるひと時を過ごすわけです。

このこと、例えて言えば、歌舞伎公演は、レストランのアラカルトメニューで、オペラは定食のフルコースと言えるでしょう。
ただし、国立劇場の歌舞伎公演は、「通し狂言」と言って、例えばこんなふうに、
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ある演目の、全幕を通して上演します。
また、平成中村座は、アラカルト上演もしますが、通し狂言も行っています。
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また、後から改めて紹介しますが、コクーン歌舞伎も、通し狂言が原則です。
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アラカルト主体の歌舞伎座でも、フルコースを提供することもあります。今年3月の公演のポスターです。
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午前の部の2つ目『新淡雪物語』は、通し狂言となっています。

ちょっと、横道に逸れます。
オペラでも歌舞伎でも、フルコースの場合は、食事メニューでもそうですが、一気に全部が続け様に出てくるのでなく、いくつかの部分に分けたのが順番に出てきます。日本語では、それぞれの部分の「幕」と呼んでいます。「幕」を更に分ける場合は、「場」になります。
英語では、Act で、それを分ける場合は、Scene です。
イタリア語では、Atto と scena、ドイツ語では、Akt と Sznene、
フランス語では、Acte と Scène です。
英語などでは、Act 1 から始まり、5幕ものなら、最後は Act 5 です。当たり前と思うでしょうが、歌舞伎では違います。
第1幕はありません。それに当たるのは、「序幕」になります。
第二幕もありません。「二幕目」と言います。そして「三幕目」「四幕目」となるのですが、全部で三幕の場合は、「三幕目」ではなく、「大詰」となります。では、二幕ものの場合はどうなるか、と言うと、「序幕」と「大詰」になります。
二幕ものの場合、ちょっと自信がなかったので、いろいろ Google したら、こんな文章がありました。
 『一本刀土俵入』は、二幕。
目次には、“序幕”の次に“大詰”と記される。この間、十年。
茂兵衛とお蔦の人生にあった筈の二幕目三幕目は、役者の工夫とご見物の想像力に任される。
「幕」の場合は、「第」が付きませんが、「場」の場合は、「第一場」「第二場」のように「第」がついています。その後の、「場」の後に、「〜の段」というように「場」の内容を説明する語句が入ることがあります。

では、なぜ、日本語では「幕」で、英語では Act か、というと、そもそも Shakespeare や、そのもっと先ギリシア劇では、舞台に「幕」がなかったからです。
日本では、「開幕」「閉幕」「幕切れ」「幕間」「幕内」
「天幕」「幕際」「内幕」など、「幕」が会って当たり前の社会ですから、「幕」になっているのです。

歌舞伎のフルコースは、毎日同じ演目を同じ俳優で原則約一ヶ月提供しますが、オペラのフルコースは、毎日違った演目を毎日違った歌手が提供します。
歌舞伎のように、同じメニューのフルコースなら、月に一回観ればよいかな、ということになります。東京の場合でしたら、新橋演舞場、月によっては、国立劇場など、他にも歌舞伎を上演している劇場がありますから、他にも観るべき歌舞伎はありますが、ヨーロッパやアメリカの地方都市の場合は、一つの歌劇場しかない場合がふううですから、毎日違ったフルコースを提供する必要があるわけです。毎日違ったフルコースでも、毎年同じフルコースですと、飽きてきます。そうなると、どうなるか、が次のトピックになります。長くなるので次回からにします。

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