オペラよもやま話 その8 見るのと、聴くのと、飽きるのは、どちら?


前回は、オペラはフルコース、歌舞伎はアラカルト、という話でした。毎日、毎年、同じフルコースを食べていると飽きてきます。そうすると、どうなるか、という話でした。

レストランでしたら、同じフルコースを出し続けると、常連客なら飽きてきますから、新しいフルコースメニューを出すでしょう。
オペラ劇場も同じです。
レストランの場合は、舌が飽きますが、オペラの場合は、何が飽きるか、というと、ここから、私の珍説?ですが、目が飽きます。
要するに、目は、見慣れてしまうのです。
オペラは聴くものでもありますが、劇場では、まず観るものです。
そこで、シーズン制をとるオペラ劇場では、数年ごとにフルコースメニューのいくつかを入れ替えます。
常識的に考えれば、全く新しい作品をメニューに加えればいいのですが、そういう場合ももちろんありますが、概して、今まで食べたこと、つまり、見たことも聞いたこともないフルコースオペラメニューは、常連のお客さん、つまり、シーズンメンバーには、なかなか受け入れられないようです。
そこで、どうするか、というと、今までと同じフルコース作品の見た目を変えるのです。こういうのを、目くらまし、とでも言うのでしょうか。
学習理論(とまでは行かないかも知れませんが)では、
聞(聴)いたことは忘れる。見たことは覚える(つまり、忘れない)
という説があります。
こういう経験はありませんか?私にはあるのですが、Audio Book というか、ネット上でも、そういうサービスがありますが、本来読むべき小説などの作品を朗読したのを、昔はカセットで、最近は smartphone で聴くわけです。
この Audio Book、Walkman や Cassette car stereo を普及した頃から、特にアメリカで普及し、特に通勤の車のなかで、カセットで、後はCD で、聴くというのが流行りました。Clinton 夫妻が人気絶頂の頃には、この二冊の本が、best seller になり、私は、どちらも CD の audio book を買って、大学まで片道約1時間、往復2時間のの車の中で、「読み」ました。
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CD 版の Audio Book が出る前は、もっぱら Cassette 版で、Frederick Forsyth の The Day of Jackal などの諸作品、Jack Higgins の Sean Dillon Series, 日本でも人気絶頂だった Sidney Sheldon の If Tomorrow Comes などと一連の best seller は、東京へ行くたびに日本橋の丸善の洋書売り場で、cassette audio books を探したり、なければ注文したものです。Amazon 以前の話です。
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で、なぜ、こういう話をしているか、というと、紙の本で文字を追って、つまり目を使って本を読むと、一度読んだ本は、特に小説など、話の筋のあるものは、二度と読まない傾向がありませんか。
なぜか、というと、見たものは覚えているので、二度目に本をひらくと、そこにある文字列は、あっ見たことある(読んだことある)となって、つまり、忘れてないので、二度と読まないわけです。
ところが、「聞いたことは忘れる」というと、
Audio Book で「聞いた」ものは、聞いたことを忘れているので、二度三度聴いても、新鮮なのです。
だから、私は、話の筋はわかっているのに、特に著者が朗読しているものは、何度聴いても飽きなかったですね。

で、このことと、今のオペラのよもやま話、との関係ですが、
フルコースのオペラを観ることは飽きても、聴くことは飽きない、ということになるわけです。
ついでに、思い出しますが、DVD や Laser Disk が普及する以前は、オペラは、聴くものでした。CD が普及してからは、LP と違って、幕の途中で切れることなく、play するのも簡単になったので、結構同じオペラを何度も聴いたものです。ところが、Laser Disk や DVD になったら、あっ、これもう観た、という感じで、二度三度観ることがなくなりました。私だけの経験でしょうか。
つまり、見たことは覚えているので、同じものを二度三度を見る気に、脳がその気にならないようです。

母親に本を読んでもらう子供は、同じところを何度も読んでもらいたがる、ということはありませんか。子供が文字を読めるようになった時、一度読んだ本は、もう読んだ、と言って読まないかもしれませんが、読んでもらって、お話を聴くのは、同じ話でも飽きないようです。Am I right?
どうですか、見どころは変えても、聴きどころは変えない、というのには、学習理論の知見から導かれる、こういう人間の、というか人間の脳の働きが絡んでいる、という解釈、納得できますか。

そこで、オペラのシーズンに話を戻すと、同じオペラでも、聴く方は飽きないので、同じオペラのフルコースを、見る方だけを変えて、上演するわけです。
見た目を変えるのに、もっとも効果がるのは、舞台装置です。これをがらっと変えれば、違ったオペラに見えます。次には登場人物の衣装を変えることです。そうすれば、別人と見間違うような人物に見えます。
では、登場人物の演技は、どうでしょう。これも変えれば、さらに目くらましになりますが、これについては、ちょっと深入りして見なければならないことがあるので、次回以降にします。
とりあえずは、舞台装置と衣装を変えれば、見違えるようなフルコースオペラになります。
だから、先に紹介した例をとれば、
歌舞伎の助六の舞台や衣装は、どの上演でも同じですが、オペラの道化師では、主人公のカニオだけでなく、登場人物は、フルコース毎に、みんな違う衣装をしています。舞台の例は、La Traviata でしたが、あの例のように、全く違った舞台になってしまうのです。

この話、もっとツッコミどころがありますが、続きは次回以降に。

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