オペラよもやま話  その17 歌手が役者になる時。



NHKBSプレミアムに「ザ・プロファイラー」という番組があります。2019年12月12日放送の『マリア・カラス』の冒頭で司会の岡田准一が、こう述べています。
歌手マリア・カラス。オペラを聞いたことのない人でも、その名を耳にしたことのある人は、多いのではないでしょうか」
あなたはどうですか。
これが、もっともマリア・カラスの写真です。容姿端麗、美女ですねえ。その下の写真と見比べてください。
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この番組で紹介された、オペラ歌手としてデビューした当時のマリア・カラスの写真です。
いろいろ伝えられているところでは、
ある日カラスは自分の姿を鏡で見て愕然とし、これではいかん、懸命に痩せる努力を始めた、ということです。真偽はともかく、回虫を飲んだ、という話も流布しています。
その結果、
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見事に、今日まで伝えられている美しい歌姫の姿に変貌したのです。
この際、マリア・カラスは単に美しい容姿に変貌しただけでなく、歌姫から、役者へ変貌したのです。
要するに、身体が軽やかになって、動き易くなったのでしょう。
この番組にゲストとして登場している、音楽評論家の片山杜秀氏が、このように語っています。
カラスに時代のオペラ歌手は、「衣装をつけて棒立ちで歌っていた」。要するに、歌手だったわけです。このことは、先に紹介した藤山一郎、淡谷のり子など、日本の歌謡歌手でも同じでしたね。
ところが、マリア・カラスは、「激しい演技を行うことによって歌い手としての個性を発揮するのに成功した。」

マリア・カラスと同時代に、オペラファンを二分して、喧々諤々と、どっちが素晴らしいか議論の対象になったソプラの歌手にレナータ・テバルディがいます。この人です。
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美人に写っています。Wiki があります。https://en.wikipedia.org/wiki/Renata_Tebaldi
この Tebaldi、1961年(昭和36年)の第3次NHKイタリアオペラ団で初来日し、「トスカ」と「アンドレア・シェ二エ」に出演しました。私は、マリオ・デル・モナコと共演した「アンドレア・シェニエ」を実演で見ましたが、「トスカ」はテレビで見ました。彼女が、「歌に生き、恋に生き」のアリアを歌い終わったときには、拍手なりやまず、10分以上も続きました。その時に、まだ、オペラ観劇に馴れていなかった日本人観衆が、感激して、盛んに「ブラボー・ブラボー」と連呼しました。私のその時に映った Tebaldi の、なんとも曰く言い難い表情を今でも覚えています。そして、その謎は、後に Tebaldi が語っています。私が大女だから、男と間違えられたのかしら」っと、彼女は当惑気味に語っていました。
イタリア語など、ヨーロッパ系の言語は、形容詞は、女性形単数、男性形単数、複数形で、形が変わります。日本人で、この区別を知っている人は、最近でもまだすくないようです。
つまり、Bravo は男性形なので、男性歌手に対して使い、女性歌手に対しては Brava、Duetで男性歌手と女性歌手に拍手するときは、Bravi と咲けばなければならないのです。Duet で見事な歌唱を聞かせた女性・男性の二人の歌手に Bravo と叫んだら、女性歌手はむくれてしまいます。
上の Tebaldi の写真、上半身だけですが、彼女の身長は、5 feet 10 inches (1m 78cm)とされています。Mario del Monaco は、彼女と共演するときは、踵を底上げした靴を履き、並んで歌うときは、つま先だつように背伸びして歌っていました。体重は、google しても分かりませんが、あの大女振りを見ると、100kg を超えていたかも知れません。つまり、「体重全盛期?」のマリア・カラスと同じです。
マリア・カラスは、100kgを超える大女では、Puccini の Mimi や Butterfly は、役者として歌えない、と減量に励んだのですが、Tebaldi は、そんなことお構いなく、あの巨体で、Butterfly も Mimi も舞台で演じました。2月2日は、Tebaldi の誕生日でした。その日の Operwire の記事によるとTebaldi は、生涯で Mimi を舞台で111 回、MET だけでも、36回演じているそうです。180 cm の Tebaldi が、あの可憐な Mimi や、たよやかな蝶々夫人、妖精のような Manon を演じて、オペラフアンの間で、マリア・カラスと人気を二分していたのです。つまり、ファンは、Tebaldi に歌手を求め、役者は求めなかったのです。
この Operawire の記事によると、Tebaldi がもっとも多く演じたのは、日本でも演じた Tosca でした。生涯で、162回だそうです。
Tosca は、Maria Callas も、もっとも得意とした役でした。Tosca は、Scalpia を刺し殺すわけで、たくましい歌手の方が似合うかもしれません。
そこで、YouTube に興味ある動画が upload されています。題して、
Which Of These Two Ways of Singing ‘Tosca’ Do You Prefer?

Renata Tebaldi と Maria Callas が、Tosca の名アリア「歌に生き、恋に生き」を歌っているのを見比べてみよう、というのです。
このアリアは、日本に来た時の Tebaldi もそうでしたが、大抵の歌手は、棒立ちで歌うだけです。少なくとも最近までは。
では、二人の歌い方はどうちがうでしょうか。見てみてください。
https://bit.ly/39tgbOE
このアリアの後が、Tosca が、Scalpia を刺し殺す場面になります。
その時の Callas と Tebaldi の演技については、そして、他の歌手の演技については、次回にしましょう。

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