グーテンベルクが売文業を生み出した。

2018年4月14日の日本経済新聞に載った、エッセイストの玉村豊男氏の「グーテンベルクのおかげ」という記事があります。
https://s.nikkei.com/3d0leJh
短い文章ですので、その大部分を引用します。

エッセイストといえば聞こえはよいが、身辺の出来事を文章にして禄(ろく)を食(は)む売文稼業である。田舎に引越せば田舎暮らしを話題にし、病気になれば病気を自慢する。
身辺雑記で原稿料がもらえる身分には本当に感謝している。誰もが等しく使うことのできる言葉を適当に組み合わせるだけで、おカネがもらえるのはグーテンベルクのおかげである。
印刷術の発明で、情報を発信する手段が特定の人びとに握られ、そのため原稿料が発生した。インターネットによって誰もが自由に発信できるようになれば、出版社も職業的執筆者も、いずれ消えていく運命にあるかもしれない。
手垢(てあか)のついた言葉を周知の文法に従って並べることで「著作権」を主張できた時代は、地球の歴史から見ればほんの一瞬の出来事である。
その「一瞬」のあいだにしかあり得ない職業に就いて人生を過ごすことができたのは、なんという幸運だろうか。


正直な文章です。

紫式部が『源氏物語』を書いた時には、印刷術はありませんでした。彼女は、「原稿料」をもらっていません。清少納言も『枕草子』で原稿料はもらっていません。兼好法師も、芭蕉も、紀貫之も、グーテンベルグ以前に本を書いた人は、原稿料をもらっていません。つまり、彼女、彼らは、「売文業」ではなかったわけです。「売文者」がいないと、著作権(Copyright) ということなど誰も考えつかないので、これは面白い読み物だと思うと、よってたかって Copy して、それを回し読みしていたわけです。オリジナルを書いた書き手も、私の書いたものを勝手に Copy して、など野暮なことは言わなかったわけです。

私の好きなことばに、こんなのがあります。
売春と売文の差のいくばくぞ
銀ほしがりて書きゐたりけり

これは、岡井隆という人の短歌(狂歌?)です。どういう人か、というと、
岡井 隆(おかい たかし、1928年(昭和3年)1月5日 - 2020年(令和2年)7月10日)は、日本の歌人・詩人・文芸評論家。未来短歌会発行人。日本藝術院会員。塚本邦雄、寺山修司とともに前衛短歌の三雄の一人。
つい最近亡くなったのですね。
経歴を見ると、
医学博士。内科医師として、国立豊橋病院内科医長などを歴任した。
https://bit.ly/33tSQMh
ちゃんとして正業があったから、「売文」で、「銀」を稼ぐ必要ななかったわけです。

そこへ行くと玉村氏は、正業がないので、「売文」で「銀」を稼がざるを得なかったわけです。

特に新書や、学術的な本の著者の経歴を見ると、ちゃんとした正業を持っている人がほとんどです。学者、研究者だけでなく、実業家や会社員の人もいます。別に「売文」で稼がなくても暮らして行ける人です。
その人達の著作は、全部出版社によって、出版されたものです。その著作の値段は、出版社が決めたはずです。
詳しくは知りませんが、巷間承るところでは、例えば、1000円の本の場合、
著者の分前は、一割の100円、そこから源泉徴収で、一割引かれて手取りは90円、売れた冊数による総額に所得税がかかります。
1000円のうち、2割の200円は、書店の分前。一割の100円は、日販、東販などと、中継ぎが取ります。
残りの6割が出版社の取り分になりますが、そこから、印刷代、製本代、運送費、そして紙代など諸経費を引いた残りが、いくらになるか知りませんが、出版社の儲けになります。
こういう出版側の事情は、さておいて、これを本を買う側の私達から眺めてみると、(眺めてみたことありますか?)

私達が、よろこんで(かどうかはわかりませんが)1000円を払うのは、本の中身、それを書いた著者の労に報いるためのはずです。
ところが、私達が払う1000円のうち、著者にわたるのは、たったの100円、残りの900円は、誰とも知らない人の手に渡っているのです。
その中で、もっとも取り分の多いのは、出版社のはずです。
つまり、私達は、本の著者より、出版社にお金を払っているのです。
なんかおかしいと思いませんか。私は、昔は、別のおかしいと思っていませんでした。
何がおかしいか?
こうなれば、この話の続きがどうなるか、もう見当がつくでしょう。その続きは、結構長くなりそうなので、明日にします。
皆さんも、どうなるか、考えてみてください。

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この記事へのコメント

y
2020年10月09日 01:14
確かに先生、仰せの通りですね、
日本の古典の原本は、一応 本人直筆とされてますが、人々がコピーしている間に、追加されたり修正されたりして、本当に全部本人が書いたのか、と疑う部分も多く、知識人を中心に、人々の好奇心による合作に変化していたおおらかな時代があったと思います。著作権がなく、みんなでコピーして読み合う姿は、現代より人間的に思えてきます。kindle出版がもたらすものへと話が続く期待を持って次を読みます。
ちょっと違ったかな、、、(^^;;