『英語ものしり帖』「首の巻」<首を斬る(斬首)>

首を斬る(斬首)

先に取り上げた「首を切る」は、英語では 文字通り cut neck でした。

「首を斬る」方の英語は、まったく違います。
首を斬る(斬首)」に当たる英語には、二つのものがあります。
behead
decapitation

です。

Wiki には decapitation しかなく、behead は その中で説明されています。
Decapitation (from Latin, caput, capitis, meaning head) is the complete separation of the head from the body.
Such an injury is typically fatal to humans and many other animals, since it deprives all other organs of the involuntary functions that are needed for the body to function, while the brain is deprived of oxygenated blood.

The term beheading refers to the act of deliberately decapitating a person, either as a means of murder or execution;
it may be accomplished, for example, with an axe, sword, knife, or by other more sophisticated means such as a guillotine.
An executioner who carries out executions by beheading is called a headsman.


Accidental decapitation can be the result of an explosion, car or industrial accident, improperly administered execution by hanging or other violent injury.

この説明によれば、decapitation は、胴体から頭部を完全に切り離されるという事実を述べる一般的な用語で、
beheading は、その行為を意図的に人を殺すか、多くの場合は斬首刑として行うこと、
となります。

ところが、続いてこのような説明が付け加えられています。

Less commonly, decapitation can also refer to the removal of the head from a body that is already dead.
This might be done to take the head as a trophy, for public display, to make the deceased more difficult to identify, for cryonics, or for other, more esoteric reasons.


この説明には less commonly となっていますが、それは 多分西洋世界のことで、日本では「首実検」の例でも分かるように、殺した相手が目当ての人物だったかどうか確かめるために、殺した後に「首」を取って「実検」するのが、commonly でした。
また、何人殺したか、殺した敵の「首」だけを取って、それを戦果として大将の検分してもらい恩賞をもらう、というのが、日本の戦国時代の風習でした。
この場合、殺してから「首」を切り取るので、英語では behead でなく、decapitate になります。

斬首刑、あるいは、殺す目的で「首を刎ねる」場合の英語が、
behead
です。
「首を切る」との違いは、cut neck をしても、頭部と胴体は切り離されませんが、behead の場合も decapitation の場合も、
head と body が切り離される、ということです。

なぜ、切り離すか、というと、decapitation の場合は、戦果として身体丸ごと運ぶわけにはいかないので、誰を殺したかわかるように、顔 face のついている頭部 head だけを持っていくわけです。
死刑にしたり殺す場合は、こういう悪い奴を殺したと、世間に見せびらかすために、顔 face のついている頭部 headを、「晒し首」にするためでした。

この切り取られた「首」head は、日本語では「生首」と言い、それを公開した場合は 「晒し首」というわけです。
英語では、google すると、

severed head    430,000
decapitated head  348,000
chopped head    46,400

decapitate は、head を切り離すという意味ですから、decapitated head というのは、意味的にに redundant ですが、多分その原義を知らない人が使っているのでしょう。
「ものしり」としては severed head、つまり、「body から切り離されたhead」を使うのがいいでしょう。

斬首は情け

刑罰として「斬首」、つまり、「首を斬る」のは、残酷と思う人が多いでしょう。
しかし、死刑宣告を受けて、「斬首」の刑に処せられるのは、ローマ時代より、身分の高い人だけでした。身分の低い人や、許しがたいと思われる人は、絞首刑や磔刑や火あぶりなど、つまり、死ぬのに時間のかかる方法で殺されました。ローマ時代には、ライオンの餌にされたりもしました。
当時のローマ人にとっては、キリストは何でもない身分の人でしたから、磔刑になりました。
その高弟で、今では、ローマのサン・ピエトロ大聖堂に祀られているペテロ(英語名 Peter)も出は漁師だったので、磔刑になっています。
下の画像は、その磔刑の場面を描いたものです。左側が、Caravaggio、右側が Fra Fillipino Lippi の作です。
画像


なぜ、さかさまになっているか、というと、

中世イタリアの年代記作者でジェノヴァの第8代大司であったヤコブス・デ・ウォラギネ Jacobus de Voragine の『黄金伝説』(Legenda aurea)は、ヨーロッパで最も広く読まれたキリスト教の聖者・殉教者たちの列伝ですが、その中のペテロのところに、このような記述があります。

ペテロは、十字架のところに着くと、こう言った。
「キリストは、天から地にご降臨になったので、頭を上にした十字架におあがりになった。
しかし、わたしは、地上から天へ行くにあたいするとされたわけだから、私の頭は地にむき、足は天をむくようにしてもらいたい。つまり、わたしは、主とおなじ恰好で十字架にかけられる値うちがないのだから、どうか十字架をさかさまに立て、頭が下になるようにしてほしいのです。」
それで、十字架をさかさにし、足を上に、手を下にむけて釘けられた。


ヤコブス・デ・ウォラギネについては下記サイトがあります。日本語版もあります。

ところが、もうひとりの高弟であるパウロ(英語名 Paul)の場合は、ユダヤ人ではあったのですが、ローマ市民権を持っていたので、時の高弟ネロから死罪を宣告され、斬首刑になっています。
その場面を描いた絵画です。
画像


パウロの死については、
How did the apostle Paul die?
というサイトがあります。

1920年時の、ローマ教皇ベネディクトゥス15世から、聖女に列せられたジャンヌ・ダルクは、もとももは農民の娘であったので、異端として処刑されて時は火あぶりの刑でした。

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