オペラよもやま話 その16 Chorus Master (オペラの合唱指揮者)の、すごい仕事。MET の場合。

 オペラの演出家は、舞台上の合唱団の歌うのの指揮はしない、ということは前回指摘しました。
では、誰が指揮をするか、です。オペラには、ちゃんと指揮者がいて、オーケストラの指揮をしています。では、その指揮者は合唱団員が舞台で歌うのの指揮をしないか、というと、それはします。
指揮者は、オーケストラの指揮をするに際して、いきなり本番ぶっつけで指揮をするわけではありません。何回も入念にリハーサルをして、本番に臨むわけです。では、指揮者は、合唱団の舞台上演前のリハーサルも行うか、というと、さあどうでしょう。
下の画像を見てください。これは、MET のある公演の DVD のケースに印刷されている、公演責任者の credit です。
Screenshot 2020-02-03 at 10.42.23 PM.png一番上に Conductor があります。これは、指揮者です。
その下に、Chorus Master があります。その人の名は、Donald Palumbo です。
この人です。世界中の劇場で公開されている MET の Live Viewing の幕間のインタービューにしばしば登場してますから、世界中のオペラファンにはお馴染みの人です。
Screenshot 2020-02-04 at 10.14.41 AM.png

やや以前ですが、2,014年11月7日に NY Times に、Donald Palumbo さんの記事が出ています。
Screenshot 2020-02-04 at 9.57.12 AM.png
The Hand That Rules the Chorus
https://nyti.ms/2GOJgaQ
そして、こんな写真が載っています。
Screenshot 2020-02-04 at 9.01.09 AM.pngDonald Palumbo は、2007年に MET の Chorus Master に就任し、MET の Chorus の level up に大いに貢献した、ということです。
上の写真からも分かるように、Chorus のリハーサルをするのは、Chorus Master の仕事です。と言うと簡単そうですが、とんでもないですね。
MET では、シーズン中に25以上の作品が上演されます。指揮者は、演目毎に変わります。が、Chorus Master は、全ての上演作品を担当しなければなりません。オーケストラの奏者は、譜面が読めればいいですが、Chorus 団員 (Chorister といいます)は、それぞれの演目のことばで歌わなければなりません。舞台で、譜面を見て歌うわけにはいかないので、全部暗記しなければなりません。
そして、そして、その暗記すべきことばは、イタリア語だけではないのです。MET の場合、通常シーズン中には、イタリアオペラ、フランスオペラ、ドイツオペラ、ロシアオペラ、英語のオペラがあります。加えて、「ルサルカ」のようなチェコ語のオペラが加わることもあります。最近では、アメリカ人作曲家 Philip Glass の、ガンジーの生涯を描いた Satyagraha は、サンスクリット語で歌われています。同じ作曲家のエジプトを舞台にした Akhnaten は、Hebrew, Egyptian and Akkadian で歌われているそうです。
Chorus master は、シーズン中の演目の全ての言語について、リハーサルを行い、Chorister 達が、ちゃんと暗記して歌えるように訓練しなかればならないのです。
これだけでも大変なのに、更にこんなことがあります。私は Instagram で METOpera をfollow しています。最近 Chorister たちのこんな投稿がありました。
Screenshot 2020-02-04 at 11.08.45 AM.png
なんと48時間で4つのオペラを歌ったというのです。幸いにフランス語のDamnation de Faustを除いては、イタリア語が三作品は、歌いなれたものでしたね。
Chorus Master の、オペラ劇場の不可欠な役割とうか、重要性については、NY Times の記事をじっくり読んでください。そして、次のインタービュー記事を読むと、更に理解が深まります。
http://www.bruceduffie.com/palumbo.html
が、残念ながら、これらは、全部英語です。オペラを楽しむにも、やっぱり、English Divide がありますね。まあ、仕方がないか。
付け足しですが、上記 Credit の最後に、Movement Director というのがあります。最近の「演出家」は、いろいろすることが多いので、Chorus や Extra の direction は、この Movement Director がするようですね。というと、あの頃の、ブルーノ・ノフリさんは、現代では、さしずめ
Movement Director であって「演出家」とは言えない存在ということになりますね。
となる、上記 credit では、Production になっている、現代の「演出家」は、どういう人で、どういう仕事するか、が、次のトピックになりますね。
追加情報:
その後調べましたら、Movement Director は、ブルーノ・ノフリさんがしていたような簡単なものではないですね。Wiki と YouTube があります。
https://en.wikipedia.org/wiki/Movement_director
https://bit.ly/2RVb0kr
20世紀になってから、オペラだけでなく、演劇の世界でも出てきた新しい専門家です。日本映画で殺陣を指導する人なんか Movement Director の一種ですね。といえばイメージが湧くでしょう。

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